最新記事

米軍

イランの射程内に駐留米軍はこんなにいる

The U.S. Has Tens of Thousands of Troops Near Iran, Here's Where They Are

2020年1月9日(木)12時20分
トム・オコナー

アメリカとイランの緊張が高まる中、追加的に中東に配備する米軍部隊3000人の大半をクウェートが受け入れると報じられている。 同国には現在、1万3000人の米軍部隊が配備されている。

■オマーン

オマーンはイランと外交関係を結んでおり、アメリカとイランを非公式な外交ルートで結びつける役割を果たすことがある。地域情勢をめぐっては中立維持に努めることが多いが、1980年からは、米軍に同国内の軍事施設を利用させている。1980年とは、イラクがイランに侵攻し、8年間にわたる血なまぐさい戦争が始まった年だ。ペルシャ湾を航行中のタンカー等を互いに攻撃し合う「タンカー戦争」も発生し、アメリカ軍が直接介入した。

オマーンは、世界で最も重要な石油海上輸送ルートであるホルムズ海峡近くという戦略的な位置にあり、およそ606人の米軍が駐留している。

■カタール

カタールには中東最大の米空軍基地がある。このアル・ウデイド空軍基地は、第一次湾岸戦争後の1996年に建設された。巨大な基地には現在およそ1万3000人が駐留しており、アメリカ中央軍(CENTCOM)の前進基地と中央空軍の司令部も置かれている。

■サウジアラビア

湾岸戦争のあいだ、多数の米軍兵士を受け入れた。その多くは戦争終結後も駐留を続け、中東のイスラム教国から批判を受けた。サウジアラビアにはイスラム教の二大聖地であるメッカとメディナがあり、米軍駐留は冒涜とみなされた。

スンニ派のサウジアラビアとシーア派のイランは長らく、中東の盟主の立場を争う関係にあり、2016年はじめに国交を断絶した。きっかけは、サウジアラビアがシーア派の著名な指導者に対して死刑を執行したこと。イランの首都テヘランでは抗議活動が行われ、在テヘランのサウジアラビア大使館には火が放たれた。

サウジアラビアには現在、アメリカ軍3000人が駐留している。しかし2019年9月に同国内の石油施設がミサイルならびにドローンによって攻撃されたため、米国防総省は同地にミサイル防衛部隊を追加派遣。犯行に名乗りを上げたのは、イエメンのシーア派一派のフーシ派(ザイド派武装組織)だが、サウジアラビアならびにアメリカはイランの仕業だと主張している。

■シリア

シリア内戦後、トランプは米軍を撤退させたがっていた。シリアもアメリカとトルコを占領軍とみなしており、繰り返し即刻撤退を求めている。トルコ政府は、シリアと敵対する一方で、アメリカの支援を受けてIS(イスラム国)掃討に力を発揮したクルド人武装勢力を最大の脅威と見ている。2019年10月にトルコのエルドアン大統領がシリア国境地帯のクルド人勢力に対して軍事作戦を実施すると、エルドアンに説得されたトランプはクルド人を裏切って米軍の撤退を決定。現在は残った800人の兵士の大半が、石油資源の豊富な東部に残留している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アマゾンとマイクロソフト、エヌビディアの対中輸出制

ワールド

米、台湾への戦闘機部品売却計画を承認 3.3億ドル

ワールド

ファイザー、肥満症薬開発メッツェラの買収を完了

ワールド

韓国、通貨安定化策を検討 ウォン7カ月ぶり安値
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中