最新記事
教育

世界で唯一、日本の子どものパソコン使用率が低下している

2020年1月8日(水)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

日本でも生活様式のICT化が進んでおり、以前に比したら子どものパソコン使用率も上がっていると思われるかもしれない。しかし日本の15歳生徒のパソコン使用率(自宅)は、2009年の48%から2018年の35%へと下がっている。何とも奇妙だが、このような国は他にあるのだろうか。<表1>は、33カ国のノートパソコン使用率の変化を示したものだ。過去9年間の伸び幅が大きい順に並べている。

data200108-chart02.jpg

2009年時点で使用率が低かった国では大幅に上昇している。中国のマカオでは19%から71%へと激増した。韓国も23%から63%に大きく増えている。しかし日本だけは下がっていて、2009年には韓国や中国、発展途上国より高かったが、2018年では最下位に転落している。

スマホが普及したためだが、それは他国も同じだ。日本だけでパソコン離れが起きているのは、宿題をしたり作品を創作したりする用途で使う生徒が少ないからだろう。

日本だけが国際的な潮流と逆行しているようで何とも恐ろしい。世界規模でデジタル革命が起き、イノベーションを競うようになるなか、これでは日本は取り残されてしまう。手のひらサイズのスマホをいじるだけで満足させてはいけない。ICTを積極的な用途で使うよう、子どもを指導するべきだ。

そのための一歩はまずパソコンに触れさせること、それが必要不可欠な環境を用意することだろう。まずは学校の校務を徹底的にICT化し、パソコンがなければ庶務連絡も分からず、課題の提出もできない――こういう環境を意図的に作り出すことから始めるべきだ。

子ども1人にパソコン1台という方針が示されているが、バラマキをしたところで、用途がなければそれに自ら触れることはない。財源は学校のICT化に費やすべきで、パソコンは各家庭に用意してもらう。困窮家庭の場合は就学援助の範疇で支給(貸与)すればいい。

荒療治かもしれないが、それが必要なほど日本のICT教育が危機的な状況にあるのは今回のデータから明らかだ。

<資料:OECD「PISA2018」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中