最新記事

ISSUES 2020

中国「皇帝」習近平は盤石ではない、保守派の離反が始まった

AN EMPEROR’S DILEMMA

2019年12月26日(木)11時05分
矢板明夫(産経新聞外信部次長、前中国総局特派員)

これら一連の問題が一気に噴出した2019年は、習政権にとっては災厄の1年だった。だがよく考えれば、これまでのツケが回ってきただけだ。

習政権は秋以降、香港と対米交渉で現実的な妥協をし、これまでの政策を軌道修正した。実際に、2019年夏以降、中国の指導者の口から勇ましい民族主義をあおる言葉はほとんど聞かれていない。

しかし、その結果、習自身が「西太后」と批判されるようになった。政権の最大の支持基盤である保守派の揺らぎは、権力掌握を何よりも重視する共産党指導者にとって深刻な事態といえる。

19年末現在、習政権を悩ます「米中関係」「香港」「経済」「台湾」の4大問題は、いずれも解決策が見えない。国際社会に歩み寄れば前進するが、支持者が大量に離反する。一方、強硬策に戻れば、問題は深刻化するのみだ。

magSR191226issues_china-4.jpg

初の国産空母を就航させたが...... IMAGINECHINA/AFLO

「3つの選挙」の勝敗次第

2020年、習政権の求心力に関わる3つの重要な選挙がある。1月の台湾総統選、9月の香港立法会選、そして、11月の米大統領選だ。

台湾は民進党の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が優位に戦いを進めている。再選すれば、独立志向をさらに前面に打ち出し、台湾海峡の緊張は高まる。

香港の立法会選挙は親中派に有利なシステムのため、民主派が過半数を取ることは難しいと言われる。だが、デモで有権者の当局に対する不信が高まり、民主派が逆転する可能性も否定できない。

米大統領選では、中国が応援する姿勢を隠そうとしない民主党のジョー・バイデン前副大統領の支持率こそ堅調だが、中国が最も目にしたくないドナルド・トランプ大統領の続投が濃厚だ。

3つの重要選挙は、いずれも見方によっては反中派と親中派との対決の形になっている。習政権は親中派支援のため、さまざまな形で選挙介入しているといわれる。だが、その効果なく1勝2敗もしくは3連敗になれば、共産党内から習政権を疑問視する声が公然と出て、権力闘争が激化する可能性もある。

2020年は習にとって試練の1年になりそうだ。

<2019年12月31日/2020年1月7日号掲載>

【参考記事】安倍外交、活発に外遊しても世界に認められない...「見える化」の処方箋

2019123120200107issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米労働市場は安定、インフレ「依然高すぎる」=クリー

ビジネス

ミランFRB理事、要請あれば「喜んで」続投

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、雇用統計受け利下げ観測後退

ビジネス

米財政赤字、1月は950億ドルに縮小 歳入増が歳出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 8
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 9
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 10
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中