中国「皇帝」習近平は盤石ではない、保守派の離反が始まった
AN EMPEROR’S DILEMMA
これら一連の問題が一気に噴出した2019年は、習政権にとっては災厄の1年だった。だがよく考えれば、これまでのツケが回ってきただけだ。
習政権は秋以降、香港と対米交渉で現実的な妥協をし、これまでの政策を軌道修正した。実際に、2019年夏以降、中国の指導者の口から勇ましい民族主義をあおる言葉はほとんど聞かれていない。
しかし、その結果、習自身が「西太后」と批判されるようになった。政権の最大の支持基盤である保守派の揺らぎは、権力掌握を何よりも重視する共産党指導者にとって深刻な事態といえる。
19年末現在、習政権を悩ます「米中関係」「香港」「経済」「台湾」の4大問題は、いずれも解決策が見えない。国際社会に歩み寄れば前進するが、支持者が大量に離反する。一方、強硬策に戻れば、問題は深刻化するのみだ。
「3つの選挙」の勝敗次第
2020年、習政権の求心力に関わる3つの重要な選挙がある。1月の台湾総統選、9月の香港立法会選、そして、11月の米大統領選だ。
台湾は民進党の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が優位に戦いを進めている。再選すれば、独立志向をさらに前面に打ち出し、台湾海峡の緊張は高まる。
香港の立法会選挙は親中派に有利なシステムのため、民主派が過半数を取ることは難しいと言われる。だが、デモで有権者の当局に対する不信が高まり、民主派が逆転する可能性も否定できない。
米大統領選では、中国が応援する姿勢を隠そうとしない民主党のジョー・バイデン前副大統領の支持率こそ堅調だが、中国が最も目にしたくないドナルド・トランプ大統領の続投が濃厚だ。
3つの重要選挙は、いずれも見方によっては反中派と親中派との対決の形になっている。習政権は親中派支援のため、さまざまな形で選挙介入しているといわれる。だが、その効果なく1勝2敗もしくは3連敗になれば、共産党内から習政権を疑問視する声が公然と出て、権力闘争が激化する可能性もある。
2020年は習にとって試練の1年になりそうだ。
<2019年12月31日/2020年1月7日号掲載>
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2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。