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健康寿命

年金維持のためどの国より健康であり続けなければならない日本──引退年齢と健康寿命の国際比較

2019年12月26日(木)17時00分
清水 勘(ニッセイ基礎研究所)

すでに引退年齢の高い日本だが、それでもまだ高齢者に就労を求めるしかない現実 Yagi-Studio-iStock

<年金制度を破綻させないために、引退年齢と年金受給年齢を遅らせるのは世界のトレンド。しかし日本は今でも引退年齢が約70歳と遅く、健康寿命まであと8.5年しかない>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2019年11月22日付)からの転載です。

1──延びる余命

日本人の平均寿命が延びている。厚生労働省が取りまとめた「2018年簡易生命表」によると日本人の平均寿命は、男性が81.25歳、女性が87.32歳で、前年から各々0.16年、0.05年延び、過去最長を更新した。平均寿命とは、その年に生まれた人が何年生きるかという平均余命を指すので、今を生きる我々が何歳まで生きるかを考える場合は、平均寿命ではなく現在の年齢に対する余命を見なければならない。例えば、60歳で今年定年を迎えた男性の余命は23.84年、84歳に届きそうなところまで生きることになる。更に、同生命表によれば死亡数がピークを打つ年齢は男性で88歳、女性で92歳であった。こうしてみても、人生は平均寿命以上に長い道のりということになる。

2──引退後の余生が7年延びた?

日本は、生産年齢人口(15~64歳)の割合が従属人口(15歳未満・65歳以上)に対して上昇する「人口ボーナス期」に飛躍的な経済成長を遂げた後、90年代からその趨勢が低下に転じる「人口オーナス期」に突入したとされている。

Nissei191224_1.jpg

この期間、日本における男性の引退年齢はどうであったか。加盟各国の年金制度を展望するOECD調査"Pensions at a Glance 2017"によると、高度成長期にあった1970年の日本の男性の平均実効引退年齢1は72.8歳であったが、2012年には69.2歳と70歳の大台を割り込んだ。その後2017年には70.2歳まで戻っているが、それでも高度成長期にあった1970年に比べれば3年近く引退年齢が前倒しとなっている。(図表1)

では、引退時の男性の平均余命はどう推移したのであろうか。1970年の平均実効引退年齢である73歳男性の平均余命を当時(1970年)の完全生命表でみると8.04年とある。また、2017年の平均実効引退年齢である71歳男性の平均余命を2017年簡易生命表でみると15.00年。単純計算で日本の男性の引退後の余生は7年近く増えたことになる。

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1 平均実効引退年齢は、OECDが算出する40歳以上の労働者が実際に労働市場から退出する平均年齢。

3──増える社会負担

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より多くの人が早期に引退しより長く生きれば社会全体としての負担も増える。年金財源を納める現役世代と年金を受け取る高齢者の割合を示す高齢者扶養率(生産年齢人口100 人に対する65歳以上の老齢人口)で見た場合、日本は、1975年の12.7%から2015年には46.2%とOECD加盟国の中では群を抜いて高い。とは言え高齢者扶養率の上昇は、日本に限らず多くのOECD加盟諸国が直面している問題だ。(図表2)

高齢化に伴い悪化する年金財政に対し各国は年金の改革を進めており、引退年齢と年金支給開始年齢の引き上げは主たる取組みの1つとなっている。

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