最新記事

中国

中国で捕らわれた外国人を待つ地獄の日々

A Cruel Fate in China

2019年12月17日(火)18時20分
ピーター・ハンフリー(調査会社チャイナワイズ創業者)

magw191217_china2.jpg

拘束中のカナダ人の解放を求める支援者 LIDSEY WASSON-REUTERS

壁や天井には湿気のせいでカビが生え、もろくて欠けやすくなり、有毒な鉛を含む塗料が剝がれ落ちてくる。壁のコンクリートにも、冬場の凍結を防ぐために有毒物質が混ぜられている。

食事は格子越しに犬用の食器みたいなボウルで供され、どれも冷たい。不衛生で、どうみてもカルシウムやビタミンなどの必須栄養素が足りない。新鮮な野菜や果物などは望むべくもない。

必要な医療措置は施していると当局は言うが、まともな治療や投薬を受けることは不可能に近い。屋外で運動する機会はほぼゼロだから、日光を浴びることも、新鮮な空気を吸うこともできない。そのせいでビタミンD欠乏症やその他の病気になりやすい。

当然、皮膚病もよくある。症状が悪化しても保釈が認められることはない。私の知る収容者のほとんどはすぐ何らかの病気になったが、治療はされなかった。癌を発症した私も同様だった。

私たちは筆記具の所持も許されなかった。看守から借りることはできたが、週に1度で、わずか数分のみ。家族や友人に手紙を書くのも電話するのも自由ではない。家族との面会も許されない。

弁護士への連絡手段も、看守から借りたペンで書く短い手紙しかない。面会依頼や、日用品を買う金や衣類を送ってほしいという伝言を頼むのが精いっぱいだった。

制度上、被疑者の家族が衣服などを送ることは認められているが、食品や衛生製品の差し入れは不可とされる。そして被疑者は毎日、拘束された状態で、公安部その他の治安当局の職員に尋問される。もちろん弁護士の同席はない。弁護士との面会はめったに許されず、実現しても常に監視され、会話は全て録音されている。面会中に被疑者がメモを取ったり、監房に書類を持ち帰ったりすることも許されない。

被疑者は毎日、かなりの時間の思想教育を受けさせられる。被疑者にクリスマス用電飾の製造といった労働を強いる施設もあるという。所内には懲罰制度もある。態度が「悪い」と判定された被疑者は日用品の購入といった権利を奪われたり、正座を強制されたり、独房に閉じ込められたりする。

まやかしの司法制度

こうした人たちは、いったい裁判が始まるまでにどれだけ待てばいいのだろう。筆者の知る限り、2年ほどは拘束される例が多い。自白を拒んだせいで、結果的に5年も拘束された人もいる。

筆者自身、看守が私たちを「未決の犯罪者」という不思議な用語で呼ぶのを聞いたことがある。未決、つまり有罪と決まっていない人を「犯罪者」と呼ぶのは、西洋の常識では考えられない。だから私は抗議したが、看守は私の抗議の意味さえ理解できなかったようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中