最新記事

中国

習近平を国賓として招聘すべきではない――尖閣諸島問題

2019年12月13日(金)12時22分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

2019年12月9日、第200臨時国会が閉幕後、記者会見した安倍首相 Kim Kyung-Hoon-REUTERS

安倍首相は9日の記者会見で、習近平を国賓として招聘することに関し、尖閣問題など「習主席に直接、提示している」として、国賓招聘の意思は変わっていない。今回は尖閣問題という視点から考察する。

安倍首相の記者会見

12月9日、臨時国会閉会に際し、安倍首相が記者会見を行った。

首相官邸HPにある「令和元年12月9日 安倍内閣総理大臣記者会見」から、習近平国家主席の国賓としての来日に関する部分だけを抜き出して、そのまま以下に記す。

(記者)

ブルームバーグニュースのレイノルズですけれども、日中関係についてお聞きしたいと思います。中国の習近平国家主席が、来春、国賓として来日すると思います。日本人の拘束問題や尖閣諸島周辺海域での中国公船の行動を受けて、自民党内からも反対する声があります。このような懸念はどのように受け止めますでしょうか。

(安倍総理)

日中両国はですね、アジアや世界の平和、安定、繁栄に共に大きな責任を有しています。習近平国家主席を国賓としてお招きをすることについては、様々な声があることは承知をしております。

しかし、新たな令和の時代の始まりに当たり、今、申し上げたような、この責任を果たすべきとの認識を習近平主席と共有し、その責任を果たすとの意思を明確に示していくことがですね、今のこのアジアの状況においては求められている。国際社会からもですね、それが求められているのだろうと、こう思います。こうした考え方から、習近平主席を国賓として招待することといたしました。

同時に、中国との間には尖閣諸島周辺海域における領海侵入や日本人拘束事案等、様々な懸案が存在しています。こうした懸案については、これまでも習主席に直接、提示してきています。

引き続き、主張すべきはしっかりと主張し、そして中国の前向きな対応を強く求めていきます。

尖閣諸島周辺海域における中国公船の領海侵入など

これまで、なぜ習近平国家主席を国賓として招いてはならないかに関しては、何度も形を変えて主張してきた。12月4日付のコラム<鳩山元首相「香港人権法」を批判 習近平と会見も>の後半でも書いたし、また1月24日付コラム<日ロ交渉:日本の対ロ対中外交敗北(1992)はもう取り返せない>などにある下記のグラフを幾度か示して反対してきた。

endo20191213101902.jpg
図1:1984年以降に中国が獲得した外資の年平均増加率と投資規模の推移

図1は2016年に中国の中央行政省庁の一つである商務部が発表した資料である。1984年以降に中国が獲得した外資の年平均増加率と投資規模が示してある。1992年~93にある赤線のピークは、外資の対中投資増加率が急増していることを示している。これは1989年6月4日の天安門事件により、西側諸国の対中経済封鎖を受けて崩壊寸前にあった中国経済を、日本が天皇陛下訪中を断行したことによって劇的に回復させ、今日の中国経済の繁栄をもたらした証拠を表しているグラフだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アクティビスト、世界で動きが活発化 第1四半期は米

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中