最新記事

テロ

テロの犠牲者減少、しかし極右による攻撃は増加傾向に:世界テロリズム指数2019

2019年11月29日(金)15時50分
松丸さとみ

テロが最も多い地域は南アジアに

地域別に見ると、タリバンによるテロが多かったこともあり、テロの犠牲者数が最も多い地域は南アジアとなった。サハラ以南のアフリカ地域が、中東・北アフリカ地域(MENA)を抜いて2位になった。MENAは3位。

MENAでのテロの犠牲者数は、前年比で4400人減少した。MENAと欧州は、今回の調査で最もテロの死亡者が大幅に減少した地域であり、それぞれ70%、65%の減少となった。

欧州では2年連続でテロによる死亡者数が減少しており、2018年は62人だった(2017年は200人以上)。テロ自体の数も減っており、2018年は245件と40%減少した。特に西欧州は2012年以来、テロの発生数が最も少ない年となった。

報告書は、シリアとイラクにおけるイスラム国の弱体化が欧州にも影響しており、2018年にはイスラム国によるテロの死亡者数は欧州ではゼロだったとしている。ただし、ジハード(聖戦)主義に影響された過激派による攻撃の犠牲者は16人いた。

なお、テロによる影響が最も少なかった地域は、中米とカリブ海地域だった。

極右思想の個人による攻撃の増加が懸念

また報告書は、テロによる死亡者数は減ったものの、ここ5年で極右思想による政治テロが増加していることを「懸念材料」としている。その他のテロ攻撃と比べると攻撃数としては少ないものの、北米、西欧州、オセアニアにおいて極右主義による攻撃はここ5年で320%増加した。

この傾向は2019年にも続いており、9月までに77人が極右主義者の攻撃で犠牲になった。極右主義者によるテロ攻撃で特徴的なのは、特定のテロ組織とつながっているわけではない、個人によるものである可能性が高い点だと報告書は指摘している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

インド製造業PMI、3月は8カ月ぶり高水準 新規受

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

ユニクロ、3月国内既存店売上高は前年比1.5%減 

ビジネス

日経平均は続伸、米相互関税の詳細公表を控え模様眺め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中