最新記事

育児

男性の育休取得について考える──月単位の育休で人事評価にも影響?「生産性」の評価を

2019年11月29日(金)16時30分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

一方で、これからは「生産性」という評価軸も必要ではないか。例えば、同程度の「量」かつ「質」のタスクについて、「生産性」の低い社員では残業が必要でも、「生産性」の高い社員では残業が必要なければ、「生産性」の高い社員には残業代というコストがかからない。それは一定の評価に値するのではないか。裁量労働制など残業代という概念のない雇用制度であっても、急速にAI化が進展する中、「生産性」という概念無しには、グローバル化の進む企業間の競争には勝てないだろう。「量」や「質」を労働時間で補えば良いという旧来型の働き方は、そろそろ卒業する時だ。

このような主張を育児の文脈で行うと、どうしても仕事と育児の両立を図る女性の話とされがちだ。しかし、女性だけでなく男性にも関係する話であり、育児だけでなく介護でも同様だ。仕事と介護の両立をするために必要な仕組みを考えると、やはり育児との両立と同様、月単位の休暇や時間短縮勤務、在宅勤務といったものになる。

Nissei191127_2.jpg

実は今、介護の状況が大きく変わっている。2000年代初頭では、同居の主たる介護者は「嫁」であったが、嫁の割合は低下し、今では「息子」が上回るようになっている(図2)。つまり、育児との両立は無縁であっても、親の介護との両立をしなくてはならない男性が増えている。

介護との両立が必要となる年代は、企業の主力戦力層である50代で多い。例えば、介護との両立のために短時間勤務をしている男性がいて、卓越したマネジメント能力を持ち、1日に数時間でも指揮を取れば組織の好業績を導けるとすれば、その「生産性」の高さは評価されるべきではないだろうか。

夫の育休で世帯年収は減少しても、妻が就業継続すれば生涯所得は約2億円の差

一方で、男性の育休取得が進めば経済的な問題が生じやすい。女性の社会進出が進んでいるとはいえ、家計の柱は夫が担う家庭は多く、夫の育休期間は世帯収入が減少してしまう。しかし、夫が育休を取ることで目先の収入は減っても、生涯所得は大きく増える可能性もあるのだ。

図3に示すように、夫の「平日」の家事・育児時間が長いほど、妻の出産前後の就業継続率は高まる。つまり、夫が家事・育児に協力的であるほど、妻は仕事を続けやすい。例えば、妻の復職時に合わせて夫が育休を取ることで、妻のスムーズな復職を促せるだろう。

Nissei191127_3_4.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中