最新記事

中国

香港民主派圧勝、北京惨敗、そして日本は?

2019年11月27日(水)13時00分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

2019年1月24日付のコラム「日ロ交渉:日本の対ロ対中外交敗北(1992)はもう取り返せない」にもグラフを掲載してご説明したが、もう一度ここに掲載する。

endo20191127095802.jpg

これは2016年に、中国の中央行政省庁の一つである商務部が描いた「1984年以降に中国が獲得した外資の年平均増加率と投資規模」である。1992年~93の赤色のカーブに注目して頂くと、外資の対中投資増加率が急増しているのが歴然と見て取れる。日本が天皇訪中を断行して低迷した中国経済に弾みをつけ、アメリカをはじめとした西側諸国が先を争って対中投資に雪崩れ込んでいった証拠が、このグラフに表れている。

こうして日本は中国の経済発展に手を貸して、今や日本のGDPは中国の3分の1ほどしかないという体たらくだ。

その中国にひれ伏して、習近平国家主席を国賓として招こうとしている。

中国が米中貿易戦争で消耗し、困窮しているために日本に微笑みかけているのは、世界中の誰の目にも明らかだろう。

香港の民主と自由を踏みにじる中国の国家主席を、日本は熱烈に歓迎するということは、習近平政権の人権弾圧を肯定するというメッセージを全世界に発信するに等しい。

EU離脱で経済が混迷を極め、中国に頼るしかなくなっているイギリスでさえ、11月25日、中国西部の新疆ウイグル自治区に、国連監視団が「即時かつ無制限にアクセス」できるよう、中国政府に求めている。

まさに「西側諸国」がこうして勇気を出して中国に「自由と民主」を強い具体的な形で要求しているというのに、日本は「自由と民主」を踏みにじる中国におもねり、その国の国家主席を国賓として招き、中国の言論弾圧と人権蹂躙にお墨付きを与えようとしているのである。

国賓として来日するということは、天皇陛下に拝謁することになる。

即位なさったばかりの天皇陛下を政治利用しようというのか。

それとも人気取りのためなのか?

国民の税金は、このような目的に使われるべきではない。

中国のことだ。江沢民同様に、今度は天皇陛下の訪中を要求し始めないとも限らない。こうして日本はどこまでも中国に利用され、尊厳を失っていく。

1992年の時は日本を追い抜くために日本を利用した中国だが、今回はアメリカを凌駕するために日本を利用しているのである。

それが日本国民に如何なる幸せをもたらすのか。習近平の国賓招聘は絶対に反対だ。安倍首相には猛省を求めたい。

(習近平を国賓として招くべきではない理由の詳細に関しては、拙著『米中貿易戦争の裏側』で考察した。)

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(11月9日出版、毎日新聞出版 )『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解

ワールド

アングル:南米の環境保護、アマゾンに集中 砂漠や草
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中