最新記事

中国

北京、動くか 香港デモ

2019年11月18日(月)12時05分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

今年4月3日に出されたアメリカ国防総省の「5Gエコシステム:国防総省に対するリスクとチャンス」という報告書では「5Gにおいてアメリカは中国に敗けている」ことを認めているが、今般の「2019年、年次報告書」においても、「次世代通信技術の覇権争いで、中国がアメリカを追い抜こうとしている」と指摘している。

この「国際標準」に関しては、日本が韓国をホワイト国から除外したせいで、これまで国際標準を決めるための5G必須特許出願の国別シェアは「中国勢:26.75%、韓国勢:25.08%」というギリギリのせめぎ合いだったものを、韓国に不利にさせてしまったので、中国に有利になっている(詳細は7月7日付コラム「対韓制裁、ほくそ笑む習近平」)。

だから「2019年、年次報告書」は「中国が国際標準を握ればアメリカの安保上のリスクは、それだけ増すだろう」と懸念している。これは中国にとって有利な分析になっているはずだが、当該報告書が香港情勢に対して実に厳しい指摘をし、かつ報告書の警告に沿って米議会上院で「香港人権民主法案」を可決する勢いが見られるので、習近平はそれをさせまいとして香港に対する意思表示をしたものと考えることができる。

香港駐屯の中国人民解放軍が突如奇妙な「出動」?

しかし、11月16日、香港駐在の中国人民解放軍は突如、奇妙な行動に出始めた。駐屯地を出て、デモ隊が路上に設置した障害物を取り除く行動に出たのである。しかも軍服ではなく丸腰で、Tシャツと短パン姿だ。

「軍が出動しますよ」という異常な威嚇を含めながら、「アメリカの手には乗らない」というシグナルを発しているようにも思える。いずれにしても、もし香港で強硬措置が実行されたとしたら、それは冒頭に述べた習近平の号令の下に動いたものと解釈しなければならない。

ここで再び申し上げたい。

このような習近平を、我が国は「国賓」として招こうと必死だ。国賓として来日すれば天皇陛下に拝謁することにもなる。それがどのようなメッセージを世界に届けることになるか、安倍総理には熟考して頂きたい。かかる国際情勢にあって、習近平を国賓として招くことは日本国民に如何なる利益ももたらさないし、大きな国際的ダメージを与え、中国に利し、アメリカの戦略に逆行する。絶対に招くべきではない!

香港の若者が自由と民主を求める気持ちは「本物」だ!状況がどうであれ、そのことに変わりはない。その意味でも、習近平を国賓として招くことに、強烈に反対する。

なお、拙著『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』では、4月3日の国防総省報告書「5Gエコシステム:国防総省のリスクとチャンス」に重点を置いて考察した。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(11月9日出版、毎日新聞出版 )『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イエメン分離派、独立問う住民投票2年以内に実施と表

ワールド

アングル:戦時下でも「物流を止めるな」 ウクライナ

ワールド

メキシコ南部でM6.5の地震、首都でも揺れ 大統領

ワールド

再送ウクライナ北東部ハルキウの集合住宅に攻撃、2人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 4
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 5
    【現地発レポート】米株市場は「個人投資家の黄金時…
  • 6
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 7
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中