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老後資金

退職後に生活水準の低下をどう防ぐか?──リバース・モーゲージなど金融商品の活用について考える

2019年11月1日(金)17時00分
高岡 和佳子(ニッセイ基礎研究所)


多額の住宅ローンが残っているのなら、いっそのこと返済しないという選択もある

住宅資産活用の代表例といえば、リバース・モーゲージである。借入金という点では一般的な住宅ローンと変わらないので純資産額が増えるわけではないが、死亡時まで元本返済の必要がなく、その分を老後の生活資金に回すことが可能となる一方、通常は月々利息を支払う必要がある(図表3)。本稿では、死亡時まで元本返済の必要がないメリットと、月々の利息支払というデメリットが老後の生活水準にどのような効果をもたらすのかを確認する。

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残念ながら、リバース・モーゲージの大部分は金利が上昇すると利息の支払い負担も増大する変動金利型である。今回は金利変動リスクを勘案しない代わりに、実勢を上回る水準を含む様々な借入金利(1.5%~4.5%、1.0%刻み)を想定し、リバース・モーゲージ活用の効果を確認する。リバース・モーゲージには、金利変動リスクだけでなく担保不動産の価格変動リスクもある。中には、自宅(担保物件)の価値が大きく下落した場合に生存中でも借入金(元本の一部)の返済義務が生じるタイプのリバース・モーゲージもあるが、今回は、住宅融資保険を利用することで、不動産価格が大きく下落しても生存中に借入金の返済義務が生じないタイプを前提とする。住宅融資保険を利用した商品は、資金の使い道が限定されるが、住宅ローンの借換えを目的とした利用が可能である。したがって想定する金融資産額残高や収入に照らして多額の住宅ローンが残っており、かつリスク回避的な世帯には適切な手段と考えられる。

リバース・モーゲージへの借換えタイミングは年齢制限を満たす限り任意だが、本稿では、65歳到達時に借換えることを前提に住宅資産の活用の効果を評価してみる。リバース・モーゲージによる資金調達は、借換え時の年齢が低いほど調達額の制約が大きく、満60歳未満の場合は不動産評価額の30%までに、満60歳以上でも50%~65%までに制限されるからである。なお、65歳時点の残債は現時点の負債総額の50%と仮定し、65歳時点で負債総額が500万円(現時点で1,000万円)を上回る場合のみリバース・モーゲージへ借換えるという前提で検証する。

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