最新記事

貯蓄

資産形成は生涯収入の配分から考える──どう貯蓄し、いつ消費するか

2019年10月18日(金)18時15分
高岡和佳子(ニッセイ基礎研究所金融研究部主任研究員)

第1の理由は、目標額が一定なら、期間が長いほど毎年の貯蓄額が少なくて済むことである。期間が倍になると毎年の必要貯蓄額が半分になるだけではない。過去の貯蓄から発生した利息にも利息が付く複利効果があるため、40年間毎年1単位を貯蓄するのと20年間毎年2単位を貯蓄するのでは、利回り3%の場合、最終的に22単位も差が生じる。(図表2実線)。

ただ、預金金利がほぼ0%の現在、狭義の貯蓄では複利効果は期待できない(図表2破線)。このため複利効果を得るにはリスクを伴う投資が必要不可欠だ。

magb191018-save02.jpg

また、狭義の貯蓄により時点間の消費の配分は可能だが、消費総額の拡大は期待できない。より多く消費したいなら、消費総額の拡大が期待できる投資を行うほうがいい。

投資する上でも期間が有利に働くことが第2の理由だ。投資にはリスクを伴うが、リスクを伴うからこそ狭義の貯蓄より高い利回りが期待できる。

サイコロを振って目が2以上なら1万円、1の場合は4000円の賞金がもらえるゲームに、参加料7500円で参加できるとする。

賞金の期待値は9000円(1万円×6分の5+4000円×6分の1)なので、確率的には参加するほうが得だが、6分の1の確率で3500円(参加料7500円-賞金4000円)損するので、参加をためらう人も多いのではないか。

消費水準を維持するには

だが、複数回参加できるならどうだろうか。例えば40回参加する場合、合計参加料30万円に対し、賞金総額が30万円を下回るのは1の目が17回以上出たケースであるが、1の目が17回以上出る確率はほぼ0%である。

投資も同じで、1回の購入なら損する可能性は軽視できないが、積立投資のように複数回に分けて購入するとトータルで損する可能性は小さくなる。購入時期を分散できるという点で、投資期間の長さは有利に働く。

第3の理由は、iDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)などの税負担を軽減する優遇制度には年間の適用上限があるからだ。若いうちにもらい損ねた優遇を、後でまとめてもらうことはできないので、若いうちから制度を利用して毎年もらえるものは着実にもらっておくほうがいい。

税負担の軽減につながる優遇制度は利用すべきだが、優遇制度の適用上限と各人の必要貯蓄額とは無関係である。優遇制度を最大限活用しているからといって、消費水準維持に十分な貯蓄ができているとは限らないし、皆が最大限活用する必要もない。

消費配分を成功に導くためには、現在の資産額と将来の収支見通しを参考に、各人が希望する消費の配分を定期的に見直すというプロセスが必要だ。

こうしたプロセスが面倒だと思うなら、せめてちまたにあふれる目標資産額だけでなく、目標貯蓄率も参考にしたほうがいい。消費水準の低下を防ぐために必要な資産額は、所得水準によって大きく異なるからだ。

<本誌2019年10月8日号:特集「消費増税からマネーを守る 経済超入門」から転載>

20191022issue_cover200.jpg
※10月22日号(10月16日発売)は、「AI vs. 癌」特集。ゲノム解析+人工知能が「人類の天敵」である癌を克服する日は近い。プレシジョン・メディシン(精密医療)の導入は今、どこまで進んでいるか。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スイス・スキーリゾートのバーで爆発、約40人死亡・

ワールド

台湾総統「26年は重要な年」、主権断固守り防衛力強

ワールド

再送トランプ氏、シカゴやLAなどから州兵撤退表明 

ビジネス

ビットコイン、2022年以来の年間下落 最高値更新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 9
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 10
    米中関係は安定、日中関係は悪化...習近平政権の本当…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中