最新記事

貯蓄

資産形成は生涯収入の配分から考える──どう貯蓄し、いつ消費するか

2019年10月18日(金)18時15分
高岡和佳子(ニッセイ基礎研究所金融研究部主任研究員)

実はより多く消費したい人にとっても貯蓄には意味がある 60kean/iStock.

<消費配分を成功に導くには、現在の資産額と将来の収支見通しを参考に消費配分を定期的に見直すプロセスが必要だ>

そもそも貯蓄って何だろう。まれに「お金持ちは貯蓄しない」といった話を聞くが、よくよく聞くと「金持ちは積極的に投資する」といった趣旨であることが多く、この場合は貯蓄に投資は含まれない。

広辞苑では、貯蓄は「財貨をたくわえること。ためること。また、その財貨。」であり、財貨は「貨幣または有価物。」だ。株式や投資信託などの投資対象は有価物だから、広辞苑の定義では投資も貯蓄に含まれる。

このように「貯蓄」の定義はさまざまだ。そこで、所得のうち消費しないで残す部分を広義の貯蓄、広義の貯蓄のうち投資以外を狭義の貯蓄と定義する。これ以降、簡略化のため広義の貯蓄は単に貯蓄と記述する。

なぜ人は貯蓄をするのだろうか。家計の貯蓄・消費行動を説明する有力なモデルは2つあり、モデルの1つは死後に資産を残そうと考える人、もう1つのモデルは死後に資産を残そうとは考えない人を前提とする。

貯蓄は所得のうち消費しないで残す部分なのだから、前者はより多くの遺産を築きたい人、後者はより多く消費したい人と言い換えてもよい。

より多くの遺産を築く目的は、子孫により良い生活を送ってほしいという利他的な願いかもしれないし、遺産があれば子孫が老後の面倒を見てくれるという利己的な思惑かもしれない。中には資産を積み上げること自体に喜びを感じる人もいるだろう。

目的が何であろうと、より多くの遺産を築きたい人にとっては貯蓄に何らかの意味がある。貯蓄に意味があるのか疑問に思う人は、より多く消費したい人ではないだろうか。そこでより多く消費したい人を前提に、これ以降の話を進める。

magb191018-save01.jpg

貯蓄のためには消費を減らす必要があるのだが、実はより多く消費したい人にとっても貯蓄には意味がある。貯蓄によって消費する時期を変更できるからだ。今日中に使い切るという条件付きで1億円をもらっても困るように、消費する時期を選べるのと選べないのなら、選べるほうがいいに決まっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促

ビジネス

米アポロ、後継者巡り火花 トランプ人事でCEOも離

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦争を警告 米が緊張激化と非難

ビジネス

NY外為市場=ドル1年超ぶり高値、ビットコイン10
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中