最新記事

2020米大統領選

ウクライナ疑惑を乗り切ってもトランプ再選には黄信号?

Come and Get Me

2019年10月8日(火)19時00分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

ロシア疑惑の捜査はFBIにより2016年7月に始まったとされているが、トランプ周辺はそれを信じていない。2015年の時点で既に、イギリス、オーストラリア、チェコなどの情報機関がCIAに情報提供していたと考えている。そして、それはオバマ前政権の情報機関トップの要請によるものだったというのだ。

オバマ前政権のジョン・ブレナンCIA長官とジェームズ・クラッパー国家情報長官は、疑惑を否定している。司法省は現在、ジョン・ダーラム連邦検事(コネティカット州)率いるチームにこの点を捜査させている。

この捜査の結果、トランプ周辺が考えているような証拠が出てくるという保証はない。仮に十分な証拠が見つかるとしても、かなりの時間を要するだろう。

世論の空気が変わるとき

差し当たりは、トランプの弾劾をめぐる戦いが始まる。大統領選の選挙戦が本格的にスタートした後まで、それが決着しない可能性が高い。

トランプ周辺には、楽観的な見方をする人たちもいる。1998年のビル・クリントン大統領(当時)の弾劾騒動と同じ結果になると予想しているのだ。

当時、野党だった共和党はクリントンを失脚させるために弾劾手続きを推し進めたが、弾劾は成功せず、それどころか有権者の不興を買う結果になった。結局、次の選挙で共和党は下院で議席を失い、クリントンの人気が盛り返した。トランプ自身も、弾劾プロセスは自分に有利に働くと述べている。

もっとも、歴史がそっくりそのまま繰り返されることはめったにない。確かに、トランプもクリントンと同様に、弾劾プロセスを乗り切る可能性が高い。共和党が過半数を占める上院で、3分の2以上の議員が弾劾に賛成することは考えにくいからだ。

しかし、ワシントンが党派間の政治闘争一色になれば、一部のトランプ側近たちの懸念が現実になりかねない。約1年後、大統領選投票日を迎える頃には、多くの有権者が政治ドラマと対立と停滞にうんざりしているかもしれない。

そうした有権者がトランプを引退生活に追い込む選択をする可能性は十分にある。

<本誌2019年10月15日号掲載>

【参考記事】トランプ弾劾調査の引き金になった「ウクライナ疑惑」のすべて
【参考記事】アメリカをめちゃくちゃにしたトランプ、それでも支持する労働者たちの「思い込み」

20191015issue_cover200.jpg
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中