ウクライナ疑惑を乗り切ってもトランプ再選には黄信号?
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ロシア疑惑の捜査はFBIにより2016年7月に始まったとされているが、トランプ周辺はそれを信じていない。2015年の時点で既に、イギリス、オーストラリア、チェコなどの情報機関がCIAに情報提供していたと考えている。そして、それはオバマ前政権の情報機関トップの要請によるものだったというのだ。
オバマ前政権のジョン・ブレナンCIA長官とジェームズ・クラッパー国家情報長官は、疑惑を否定している。司法省は現在、ジョン・ダーラム連邦検事(コネティカット州)率いるチームにこの点を捜査させている。
この捜査の結果、トランプ周辺が考えているような証拠が出てくるという保証はない。仮に十分な証拠が見つかるとしても、かなりの時間を要するだろう。
世論の空気が変わるとき
差し当たりは、トランプの弾劾をめぐる戦いが始まる。大統領選の選挙戦が本格的にスタートした後まで、それが決着しない可能性が高い。
トランプ周辺には、楽観的な見方をする人たちもいる。1998年のビル・クリントン大統領(当時)の弾劾騒動と同じ結果になると予想しているのだ。
当時、野党だった共和党はクリントンを失脚させるために弾劾手続きを推し進めたが、弾劾は成功せず、それどころか有権者の不興を買う結果になった。結局、次の選挙で共和党は下院で議席を失い、クリントンの人気が盛り返した。トランプ自身も、弾劾プロセスは自分に有利に働くと述べている。
もっとも、歴史がそっくりそのまま繰り返されることはめったにない。確かに、トランプもクリントンと同様に、弾劾プロセスを乗り切る可能性が高い。共和党が過半数を占める上院で、3分の2以上の議員が弾劾に賛成することは考えにくいからだ。
しかし、ワシントンが党派間の政治闘争一色になれば、一部のトランプ側近たちの懸念が現実になりかねない。約1年後、大統領選投票日を迎える頃には、多くの有権者が政治ドラマと対立と停滞にうんざりしているかもしれない。
そうした有権者がトランプを引退生活に追い込む選択をする可能性は十分にある。
<本誌2019年10月15日号掲載>
【参考記事】トランプ弾劾調査の引き金になった「ウクライナ疑惑」のすべて
【参考記事】アメリカをめちゃくちゃにしたトランプ、それでも支持する労働者たちの「思い込み」
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡