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ウクライナ疑惑を乗り切ってもトランプ再選には黄信号?

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2019年10月8日(火)19時00分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

だがトランプの側近グループは必ずしも楽観的ではない。複数のホワイトハウス情報筋によると、ミック・マルベイニー大統領首席補佐官代行、長女のイバンカ・トランプとその夫ジャレッド・クシュナーなどは、ムラー報告書の提出後は「平穏な時間」が続いてほしいと希望していた。強い経済の波に乗り、そのままの勢いで大統領選に突入したい考えだったと、側近の1人は言う。

疑惑やスキャンダルが次から次にメディアで取り上げられる現状には、選対スタッフの一部からも懸念の声が出ている。ロシアとの「共謀」、大統領の地位をビジネスに利用した疑惑、そしてウクライナ問題......。このままでは無党派層と共和党穏健派が逃げ出しかねない。

側近たちは、有権者が「トランプ疲れ」から「民主党良識派」(あるトランプ選対幹部の言葉)にくら替えする事態を懸念している。もっと具体的に言えば、ずばりバイデンだ。

実際、ほとんどの世論調査では、大統領選の本選挙がトランプ対バイデンになった場合はバイデンが勝つという結果が出ている。2016年の大統領選でトランプ勝利の決め手になった中西部でもバイデンの人気は侮れない。

少なくとも、いまウクライナ疑惑が浮上したことで、トランプ陣営が「平穏な時間」を享受できなくなったことは確かだ。

トランプがウクライナのゼレンスキーに電話したのは、7月のムラーの議会証言により、ロシア疑惑での弾劾の可能性が事実上なくなった次の日だった。「大統領選の年に向けて状況が好転しそうだと思ったのに」と、ある幹部は落胆を口にしている。

トランプは、ウクライナ疑惑を全面否定で切り抜けるつもりらしい。つまり、ゼレンスキーに電話した際、軍事援助などの支援をちらつかせバイデンと息子の不利になる捜査を求めた事実はないと主張している。電話会談の記録を見れば、自らの潔白は明らかだという。

むしろ、自分こそ、そうしたやり口の犠牲者だとトランプは言いたいらしい。オバマ前政権が外国政府に働き掛けて自分を追い落とそうとした、というのである。

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