雇用延長で老後の生活水準はどうなるか
続いて、厚生労働省平成30年賃金構造基本統計調査を参考に、それぞれの就労パターンで期待できる収入を考える。はじめに、(1-1)パートやアルバイトの従業員として就労するパターンの期待収入を、短時間労働者の賃金データを参考に考える。
男性で65歳から69歳の短時間労働者の年齢階級別1時間当たり賃金(1,246円)、平均実労働日数(14.8日)、及び1日当たり所定内実労働時間数(5.4時間)を参考にすると、月額10万程度と考えられる。次に、(1-2)パート・アルバイト以外の非正規の従業員として就労するパターンと(2)正規の従業員として就労するパターンを考える。男性で65歳から69歳の一般労働者(短時間労働者以外の労働者2)の賃金は、非正規の従業員で月額22万円程度、正規の従業員で月額30万円程度であるが、この値は利用しない。所得に関するデータは一部の高所得者の影響により平均値が中央値を大きく上回る傾向があるからだ。
そこで、一般労働者の賃金の分布(図表2)を参考にする。賃金は正規の従業員の方が高い傾向にあること、65歳から69歳における一般労働者に占める非正規の従業員と正規の従業員の割合はほぼ同数であることから、(1-2)パート・アルバイト以外の非正規の従業員として就労するパターンの期待収入を賃金が低い方から25%目の人の賃金(月額17万円程度)とし、(2)正規の従業員として就労するパターンの期待収入を賃金が低い方から75%目の人の賃金(月額28万円程度)とする。但し、(2)正規の従業員として就労するパターンに限り、賞与(2か月分×年2回)を加算する(図表3)。
就労延長などによる効果
先のレポート1と同様に、各種公表資料3を参考に、老後の資金の準備状況に応じて50代を4つのグループに分割し、就労延長などによる各グループの構成割合の変化を確認する。グループ1とは、退職時の退職給付も含めると、既に十分な資産を保有し、生活水準が低下する可能性が極めて低い世帯である。グループ2とは、今後の資金計画次第で生活水準が低下する可能性を回避できる世帯である。グループ3とは、生活水準が低下する可能性が高いが、今後の資金計画次第で低下率が10%未満にとどまる見込の世帯である。最後に、グループ4とは、生活水準が低下する可能性が極めて高く、かつ低下率が10%を超える見込の世帯である。
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2 賃金構造基本統計調査において「一般労働者」とは、「短期労働者」以外の者であり、正規か非正規とは無関係である。なお、「短期労働者」とは、同一事業所の一般の労働者より1日所定労働時間が短い又は1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者をいう。
3 家計調査及び広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成30年調査結果)、厚生労働省平成30年就労条件総合調査、東京都労働相談情報センター中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版))、及び中小企業庁 中小企業の企業数・事業所数(2016年)