最新記事

国際ガールズ・デー(10月11日)

中米グアテマラの女の子たちが、奪われた未来を取り戻すために

2019年10月8日(火)15時15分
安田菜津紀(フォトジャーナリスト)

そのような状況の中、国際NGO「プラン・インターナショナル」(以下、プラン)は、女性、女の子たちを対象としたワークショップを行っている。「ジェンダー平等促進プロジェクト」の中で開催しているワークショップには、11~15歳の女の子、約380人が参加している。

ワークショップには学校に通っていない女の子たちも多く参加し、子どもの権利、ジェンダー平等について学ぶのと同時に、保守的なコミュニティの中では知識を得ることが難しい体の変化、衛生キットの使い方などについても触れる機会を得ている。参加者からは、「自分にも学ぶ権利、自分の意思を伝える権利がある」と気付くこと自体が、「生まれ変わったような気持だった」という声が聞かれた。

同時に行われている男性向けの研修では、「ジェンダー平等」に加え「子どもの教育の大切さ」などを学ぶ。これまでは「学校に行くのは男の子だけ」と考えていた父親が、研修への参加を通じ「娘を学校に通わせる」意義を認識し始めている。

女の子たちの中には、「将来、心理療法士になって、性暴力の被害を受けた子どもの心理ケアをしたい」という声もあった。性暴力という問題があることも、心理療法士という仕事も、学びの場がなければ知り得なかったかもしれない。

こうした学びのなかで、これまで閉ざされがちだった女の子たちの未来が今、より豊かな選択肢と共に拓かれつつある。

国際ガールズ・デー(10月11日)関連イベント(国際NGO「プラン・インターナショナル」)

plan05.jpg

チマルテナンゴ県チマルテナンゴで、地元ボランティアたちが主催する学校外の教室に、コミュニティの子どもたちが集まってきた。こうした取り組みは学びの機会を築くだけではなく、具体的な居場所づくりをすることで、子どもたちの安全を守る意味もある


plan06.jpg

学校外の教室に集う地域の子どもたち。授業はまず、祈りのひと時からはじまる


plan07.jpg

バハベラパス県プルラ中心地に広がる市場。農業に携わる人々が多くを占めるこの街では、市場には雑貨に加え、採れたばかりの瑞々しい野菜が並ぶ


plan09.jpg

プラン・インターナショナルの活動で、女の子たちに配られた生理用キット。生理についての知識を得る機会が乏しく、戸惑って家にこもってしまう少女たちもいるという。手に取りやすいようデザインや色使いもかわいらしいものになっている


plan10.jpg

プラン・インターナショナルの活動に参加してきたレイナさん(15)、エリダさん(13)、ロリアさん(14)。マヤの人々の間で受け継がれてきた、刺しゅう入りの伝統衣装が彼女たちの誇りだ

<撮影:安田菜津紀 ©Natsuki Yasuda / Dialogue for People>

【安田菜津紀プロフィール】
1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事-世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

為替介入「当然考えられる」と片山財務相、無秩序なら

ビジネス

債務残高、対GDP比率引き下げて発散しないようにす

ワールド

シンガポールGDP、第3四半期は予想上回る 25年

ビジネス

AIブームが新リスク、金融業界からは買収の高プレミ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中