ジャングル火災はアマゾン以外でも インドネシア、オランウータンなどに深刻な影響
焼け出され呆然としてたたずむオランウータン。火災の煙が立ち込めると空気は煙草50本を一度に吸ったようなひどい状態になるという。Willy Kurniawan - REUTERS
<南米アマゾンの火災は地球温暖化への影響があるとして世界中の注目を集めている。一方、インドネシアのジャングルの火災は、絶滅危惧種などの野生動物が生息地を失い、広範囲で人びとが健康被害を受けている>
インドネシアではスマトラ島、カリマンタン島(マレーシア名ボルネオ島)を中心にした熱帯雨林で火災が続いており、その煙害が隣国のシンガポールやマレーシア、そしてフィリピン上空まで流れ込み、住民の呼吸器系疾患などへの深刻な影響を与えている。
インドネシアの煙害は主に開発業者による「森林焼き払い」やプランテーション業者や農民による伝統的な「焼き畑農業」という人為的な「放火」が要因で、毎年この時期に近隣国から苦情が寄せられるのが「恒例」となっている。
しかし2019年の煙害は近年になく大規模、広範囲で周辺国から厳しい抗議を受け、ジョコ・ウィドド大統領も現地視察や軍・警察の動員などで必死の消火作業を続けている。加えて航空機から化学物資を空中散布しての降雨作戦や民間呪術者などによる「雨乞い」行事も行われるなど必死の対応だが、消化が追いつかない状況が続いている。
そんななか、スマトラ島とカリマンタン島にだけ生息する絶滅危惧種のオランウータンにも煙害の被害が及び始める事態になっている。
脱水症状のオランウータン保護
9月21日、西カリマンタン州北クタパン地区のクアラ・サトンムラ近くで現地の自然保護庁職員が1頭のオランウータンを保護した。
「テンポ」紙によると保護されたオランウータンは7歳のオスで住民がゴムプランテーションに迷い込んでいるところを発見、自然保護庁に連絡。係官らが自然保護活動家やオランウータン研究専門家らと協力して保護したという。
このオランウータンは保護時に使用したロープで右脚を負傷したほか、ひどい脱水症状だったため保護施設で治療した後、安全なジャングルに戻すという。
自然保護庁関係者によると、オランウータンが保護された地区はかつて濃密なジャングルが続いており、多くのオランウータンの生息が確認されていたという。
その後開発が続き、ジャングルが減少したうえにゴムプランテーション周辺は今年の森林火災でジャングルの焼失が続いており、オランウータンの生息域が狭くなりエサが減少した結果、脱水症状になって人の居住地区に近いプランテーションに出てきたものとみている。