最新記事

停電

大停電、今すぐにやるべき対策と、再発防止に必要となる備えとは

2019年9月18日(水)11時44分
南 龍太(ジャーナリスト)

日本は先進国の中でも停電が起こりにくい国とされてきたが…… tzahiV/iStockphoto

<台風により千葉県で大規模な停電が発生。被害に対する即効性のある対策とともに、電力インフラの長期的な「強靭化」が求められる>

関東史上最強という台風15号の上陸から1週間余り、各地に大きな爪痕を残し、千葉県で今も多くの家庭が停電している。東京電力は復旧作業を急ぐ一方、見通しの甘さを指摘され、初動や計画の立て方に課題を残した。国や自治体などの対応を含め、今後検証が必要となる。

世界的に見て停電が少ないことで知られていた日本は、昨年以降大規模な事故が相次ぎ、災害対策が急務だと電力大手は再認識している。国も電力インフラのレジリエンス(強靭化)を掲げ、台風による倒壊が問題となった電柱をめぐっては、電線類を地中化する議論が再び持ち上がってきた。ただ、要する時間と費用の観点から即効薬にはなり得ない。電力を供給する側に今求められているのは、停電発生を前提とした、確かな被害情報と応急策の把握、そして発信の態勢強化だ。加えて、需要家側にEV(電気自動車)という「非常用電源」の備えがあれば、強い味方になると期待される。

東日本大震災より長期化

今月5日に発生した台風15号は関東地方で猛威を振るった。家屋や護岸の損壊など大きな被害を出し、特に千葉県を中心に大規模な停電を引き起こした。一時最大で90万戸超が停電し、18日10時現在、5万戸弱でまだ停電が続いている。高さ40メートルを超す鉄塔の倒壊や、2000本以上に及んだ電柱の損壊が停電の拡大、長期化を招いたようだ。

2011年3月に発生した東日本大震災では東電管内で405万戸が停電した。ただ、この時でさえ停電は7日で解消しており、今回の停電の深刻さを物語っている。

日本は本来、先進国の中で最も停電が起こりにくい国とされてきた。1世帯当たりの停電は2017年度に年間で平均0.4回、16分だった。特に東電管内は8分と国内屈指の低水準で、ドイツの13.26分、イギリスの46.53分、フランスの52.60分(各16年)と比べても、その短さが際立つ。

190917minami3.png

資料:東京電力 ※日本は16年度実績、海外は悪天候時を含む16年実績


相次ぐ大規模停電

しかし、2018年度の実績値は悪化することも予想される。秋に大規模停電が相次いだためだ。

18年9月に発生した台風21号で関電管内の延べ220万戸、台風24号で中部電の延べ119万戸がそれぞれ停電した。関電の被害は阪神・淡路大震災に次ぐ規模、中部電も平成以降で最大だった。そして9月に最大震度7の地震に見舞われた北海道では、基幹電源の苫東厚真発電所(厚真町)が止まり、道内全ての295万戸が停電した。この管内全域での長期にわたる「ブラックアウト」は、電力業界にとって太平洋戦争後初めての異常事態となった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国、エヌビディアが独禁法違反と指摘 調査継続

ワールド

トルコ裁判所、最大野党党首巡る判断見送り 10月に

ワールド

中国は戦時文書を「歪曲」、台湾に圧力と米国在台湾協

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中