最新記事

事件

MITメディアラボの伊藤穣一所長辞任、そしてビル・ゲイツにも飛び火? 

2019年9月9日(月)18時30分
坂和敏

Photograph of Joichi Ito by Mizuka. Wikicomons

<獄中で自殺した米富豪のジェフリー・エプスタイン氏からの資金提供を受けたことで批判されていた伊藤穣一氏が、メディアラボ所長を辞任した......>

性的虐待疑惑で逮捕され、先月獄中で自殺した米富豪のジェフリー・エプスタイン氏からの資金提供を受けたことで批判を受けていたMITメディアラボ所長の伊藤穣一氏が、9月7日、メディアラボ所長を辞任した

ネグロポンテ氏「もらえる金はもらえ」

その前日6日夜、エプスタイン氏との繋がりの深さや、メディアラボ上層部による寄付を匿名化しようとした隠蔽工作の証拠を示した内容の記事がNew Yorkerで公開され、これを受けて、翌7日に伊藤氏は辞任を決めたようだ。伊藤氏は今回、メディアラボ所長の辞職に加えて他の要職──マッカーサー財団、ナイト財団、それにNew York Timesのボードメンバー(社外取締役)も辞任した。また、先日お伝えした伊藤氏を支援するサイト「In Support of Joi Ito」も閉鎖されている。

この動向についてはMIT Technology Reviewだけでなく、BloombergCNETでも報じられており、この騒動に対して徐々に注目が集まっている。

前述のNew Yorkerの記事では、伊藤氏ともう一人のメディアラボ幹部ピーター・コーエン氏は、MITの大学当局には内緒でエプスタインから金を受け取っていたとある。「MITのデータベースでエプスタインは不適格者とされているのを知りながら」「小口に分けて、匿名で処理すれば大学側には知られずに済む」などともあり、さらに伊藤氏とエプスタイン氏が相談しながら資金集めのプロジェクトを進めていたともある。

また、この少し前には、メディアラボ初代所長のニコラス・ネグロポンテ氏が、「エプスタインのような怪しい輩からでも、もらえる金はもらえ("Take it")」と伊藤氏に助言したとされている。

ビル・ゲイツも関わっていた?

ちなみに、今回のNew Yorker記事を書いたのは、一昨年世界的に大きな注目を集めたハーベイ・ワインスタインのセクハラスキャンダルを報じ、それでピュリッツァー賞をとった新進気鋭ジャーナリストのロナン・ファロー氏(ミア・ファローとウディ・アレンの息子)だ。

そして、この記事で新たに関与の可能性が浮上したのがビル・ゲイツ氏で、同記事では「エプスタインの斡旋で、ゲイツ氏の基金からMITメディアラボに200万ドルが流れた」としている。

ただし、ゲイツ側の広報担当者からはさっそくこれを否定するコメントが出された。もし本当であれば、ゲイツ氏も不注意を咎められることになりそうで、いずれにしてもエプスタインをめぐる騒動は今後もしばらく続きそうな気配だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続伸、マグニフィセント7などの決算に

ビジネス

NY外為市場=円、対ユーロで16年ぶり安値 対ドル

ビジネス

米テスラ、新型モデル発売前倒しへ 株価急伸 四半期

ワールド

原油先物、1ドル上昇 米ドル指数が1週間ぶり安値
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 10

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中