最新記事

サイエンス

地球には「大絶滅」がもう一回あった

Two Billion Years Ago, up to 99 Percent of Life on Earth Died

2019年9月3日(火)15時45分
ハナ・オズボーン

地球上の生き物の99.5%は、20億年前に絶滅した NASA/GSFC

<恐竜の絶滅や過去最大の絶滅と言われる元祖「大絶滅」と比肩しうる規模の絶滅があったことが研究でわかった>

地球上の生き物は、20億年も前にざっと99.5%が死滅していたことが判明した。この大量絶滅では、約6600万年前に地球上から恐竜が一掃された時よりも多くの生物圏が消滅したという。

通常、大量絶滅は化石を通して追跡できる。化石を調べれば、動物たちがどの時期に存在し、どの時期に存在していなかったかが分かるのだ。だが複雑な生命(多細胞生命)が生まれる以前の大量絶滅は、追跡がより難しい。当時、地球上に生息していたのはさまざまな微生物だが、微生物の化石から過去の事実を読み解くのは難しいのだ。

<参考記事>世界の昆虫の40%以上が絶滅のおそれ 生態系に与える影響は壊滅的
<参考記事>地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

だが8月中旬、米国科学アカデミー紀要にある研究報告が発表された。国際的な科学者チームが、カナダのハドソンベイで採取した、数十億年前にできたとみられる岩石を調べた結果だ。研究者たちは、これらの岩石に含まれる重晶石と呼ばれる鉱物を調べた。この鉱物には、特定の時期に大気中に含まれていた酸素の量に関する情報が含まれているのだ。

恐竜絶滅時よりも大量の生物が消えた

この研究から、研究者たちは20億5000万年前に地球上の生き物が大きく減ったという所見を得た。ちょうど大気中の酸素濃度に大きな変化があった時期だ。大量絶滅の約24億年前、大気中の酸素の量は大幅に増加した。「大酸化イベント」として知られる。その後、酸素の量は劇的に減った。地球上の生命にとってみれば「ごちそう続きの日々が一転、食糧不足の日々」に変わったようなもので、しかもこの状態が約10億年にわたって続いたという。

この論文の著者で、ワイツマン科学研究所(イスラエル)と米プリンストン大学に在籍するピーター・クロックフォードは「とても驚いた」と語った。「これほど大きな兆候を、このサンプルから発見できるとは思っていなかった」

「この大量絶滅の1億年前から2億年前、地球上には多くの生き物がいたが、その後大部分が死滅した。より最近の大量絶滅ではその後に生態系が回復したが、約10~20億年前の大量絶滅の後は数十億年にわたって生き物が少なく生物圏も小さい状態が続いた」

クロックフォードらの推定では、20億年前の大量絶滅では「地球上の生物の約80%~99.5%が絶滅した」。恐竜が絶滅した時に地球上から消えた生物は全体の約4分の3、これまでに知られているなかで最大の絶滅である約2億5200万年前の「大絶滅」で絶滅したのは陸上生物の約70%と海洋生物の約96%だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

UBS、第3四半期純利益は予想上回る74%増 ディ

ビジネス

アングル:NT倍率が最高水準に接近、日経平均の「A

ビジネス

NEC、通期業績予想を上方修正 国内IT好調で

ビジネス

米財務長官の発信にコメント控える、日銀会合も踏まえ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 3
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 4
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 10
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 10
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中