最新記事

韓国【文在寅政権の成績表】

韓国・文在寅政権が苦悩する財閥改革の現在地

2019年9月27日(金)17時30分
前川祐補(本誌記者)

結論から言うと、文政権および金尚祚氏は財閥改革における全ての分野においてドラスティックなことはやっていないし、やれていない。

金尚祚氏は少数株主運動などを通じて財閥の株主総会で経営陣を追求することなどをやってきた。そこでの経験から、現実的にはドラスティックな財閥改革を行うことが非常に困難であるということが良くわかっている。そのため、なるべく徐々に改革を進めていこうという意識は最初からあった。

――具体的にはどのような改革から始めた?
最初に実施しようとしていたのは、財閥に対して自主的な改革を促すこと。政権発足後の17年6月、金尚祚氏が財閥トップらとの懇談会で促したことの1つが、複雑な持ち株構造を是正してシンプルな持株会社をつくること。(不透明なグループ経営と経済力集中の温床となっていた)従来の形態を廃止して、持ち株会社の傘下に関連企業がぶら下がる単純な構造にすることを目指したものだ。金尚祚氏はまず、その実現に向けて自主的な改革を期待すると、財閥の経営陣らに促した。その進捗を見ていくとクギを刺しつつ、だ。

――朴槿恵前政権が財閥との癒着でつまづき崩壊したことを考えると、「自主改革」には生ぬるさを感じるが。
財閥改革の難しさを知っている金尚祚氏だからこその対応だったのではないかと考える。そもそも財閥を締め上げるような規定を作ること自体が困難で、成立したとしてもすぐに抜け道が作られてしまう。法律だけで締め上げることの限界を彼はよく分かっている。そのため、(強烈な民意に後押しされた)政権の勢いを利用してというか、法的な対応よりも無言の圧力で改革を促すことを狙ったのだと思う。

――自主改革の成果はあった?
難しさを露呈している。例えば、現代自動車グループは政権が推奨するところの「持ち株会社」を新設する計画を発表した。おそらく事前に政府のお墨付きもある程度得ていたのではないかと思う。

ところが実際にその計画を発表したところ、外部の株主から猛反発を受けた。新しい持ち株会社を創設するために企業間の一部合併や分離を実施した場合、株主価値が毀損すると考えた投資家、とりわけ外資の投資家が強く反発した。その結果、持ち株会社の設立計画自体がとん挫した。

こうしたこともあり、財閥改革において企業、政府、そして外部株主の全者が喜べる方法は見出せていない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、財務長官に投資家ベッセント氏指名 減税

ワールド

トランプ氏、CDC長官に医師のデーブ・ウェルドン元

ワールド

トランプ次期大統領、予算局長にボート氏 プロジェク

ワールド

トランプ氏、労働長官にチャベスデレマー下院議員を指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中