最新記事

寄生虫

寄生虫に乗っ取られた「ゾンビ・カタツムリ」がSNSで話題に

2019年8月15日(木)16時30分
松岡由希子

寄生虫に乗っ取られ、鳥に食べられるように目立っていたカタツムリ...... Viral Press-YouTube

<台湾で発見されたカタツムリが、ロイコクロリディウムと呼ばれる寄生虫に寄生され、運動ニューロンが乗っ取られた状態にあることがわかって、さらに話題に......>

オレンジや緑の鮮やかな蛍光色で光る奇妙なカタツムリが、ソーシャルメディアネットワーク(SNS)を中心に「ゾンビ・カタツムリ」と言われて、話題を集めている。

このカタツムリは、2019年8月9日、台湾中西部彰化県の山腹でハイキング中の男性によって発見されたものだ。男性は「カタツムリの中にカラフルなネオンの光が入っているようにみえた。その理由はわからないが、非常に奇妙だった」とコメントしている。

matuoka0815a.jpg

Viral Press-YouTube

鳥をだまして捕食させ、鳥の腸管で卵を産む......

豪ラ・トローブ大学のマイク・イノウエ准教授によると、このカタツムリは、ロイコクロリディウムと呼ばれる寄生虫に寄生され、運動ニューロンが乗っ取られた状態にあるとみられている。

ロイコクロリディウムは、中間宿主であるカタツムリを"餌"に似せさせ、終宿主の鳥に積極的に捕食させようとするのが特徴だ。カタツムリの触角に寄生し、蛍光色で脈動しながらイモムシに擬態し、鳥をだまして捕食させ、鳥の腸管に移って成長し、卵を産む。ロイコクロリディウムの卵は鳥の糞とともに排出され、これを食べたカタツムリに再び寄生するという流れだ。

鳥に見つかりやすくなるよう、カタツムリの行動を制御している

2013年11月には、ポーランドのヴロツワフ大学の研究チームが、ロイコクロリディウムに寄生されたカタツムリと正常なカタツムリの行動を比較した研究論文を発表している。

研究チームがポーランド東部のビャウォヴィエジャ国立公園でこれらの行動を実際に観察したところ、その特性は明らかに異なっていた。

カタツムリは一般に、乾燥を避け、天敵から見つからないよう、朽ち木や葉の裏などに身を隠して生息するが、ロイコクロリディウムに寄生されたカタツムリは、より速く移動し、開放的で明るい場所や、草木の高い位置にいたという。鳥に見つかりやすくなるよう、ロイコクロリディウムがカタツムリの行動を制御していると考えられている。

終宿主にたどり着くべく、中間宿主の体を乗っ取り、その行動まで操るロイコクロリディウムには、ただ驚かされるばかりだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中