最新記事

サイエンス

太陽熱をつかって、海水から真水を生成する装置が開発される

2019年7月26日(金)17時40分
松岡由希子

海水から真水を生成する Monash University

<豪モナシュ大学の研究チームは、太陽熱を活用し、海水から塩分をほぼ100%取り除いて真水を生成する新たな海水淡水化システムを開発した>

気候変動や人口増加に伴って、水資源の安定的な確保は、より重要な課題となっている。水不足緩和の手段として、海水淡水化や廃水の再生利用の普及がすすめられているが、これらの処理には多くのエネルギーを必要とし、米国では総エネルギー消費量の約3%を占めている

光を吸収するカーボンナノチューブと親水性の高い濾紙

豪モナシュ大学の研究チームは、太陽熱を活用し、海水から塩分をほぼ100%取り除いて真水を生成する新たな海水淡水化システムを開発した。一連の成果をまとめた研究論文は学術雑誌「エナジー&エンバイロメンタルサイエンス」で掲載されている。

海水淡水化において、太陽熱を利用して海水や廃水を蒸発させ、発生した水蒸気を凝縮させることで真水を得るという手法は、これまでにも様々に研究されてきたが、表面の塩分濃度によって蒸発プロセスが妨げられ、生成される水の質に影響をもたらす点が課題であった。


そこで、研究チームは、光を吸収するカーボンナノチューブの層と親水性の高い濾紙を使った円盤形のデバイスを制作した。直径1ミリの綿糸を通水路として、塩水をこの円盤に注入し、中心まで移動させると、濾紙が真水をとらえながら、塩を円盤の縁に押しやる仕組みだ。カーボンナノチューブの吸光度は太陽スペクトル全体の94%で、光に当てると円盤の温度が直ちに上昇。

産業廃水の無排水化にも応用できる?

円盤が乾いていれば25度から50度まで、湿っている場合でも17.5度から30度まで、1分以内に温度が上昇する。円盤の縁に残った塩の結晶化を適切に制御すれば、真水を生成しながら、製塩することも可能だ。オーストラリア南部ラセピード湾の海水を使った実験では、600時間以上にわたって蒸気を発生させながら塩を生成し続けることに成功している。

この円盤形のデバイスは、電力インフラの乏しい国や地域でも、太陽熱を使って、清潔で安全な真水を海水から効率的に生成できるのが利点だ。また、この技術は、海水淡水化のみならず、産業廃水の無排水化(液体廃棄物を施設外に排出しないこと:ZLD)や汚泥脱水などにも応用できるのではないかと期待が寄せられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米への外国観光客は昨年6%減、欧州や日本にシフト=

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、急騰の反動売り 米株安は

ワールド

ベセント氏「過度な為替変動望ましくない」、日米財務

ビジネス

米、シェブロンにベネズエラでの操業拡大を認可へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広がる波紋、その「衝撃の価格」とは?
  • 3
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救った...実際の写真を公開、「親の直感を信じて」
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 8
    年始早々軍事介入を行ったトランプ...強硬な外交で支…
  • 9
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 10
    宇宙に満ちる謎の物質、ダークマター...その正体のカ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 10
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中