ドイツにネオナチ・テロの嵐が来る
Germany Has a Neo-Nazi Terrorism Epidemic
リュブケ殺害事件と同種の襲撃事件は近年多発している。15年にケルンのヘンリエッテ・レーカー市長、17年には西部アルテナのアンドレアス・ホルシュタイン町長が刃物で切り付けられた。レーカーは周辺にいた数人と共に重傷を負った。ホルシュタインはトルコ料理店で食事中に襲われたが、店員らが犯人を取り押さえ、軽傷で済んだ。
ライプチヒのブルクハルト・ユング市長によると、国内では政治的動機による政治家への犯罪が1日平均約3件起きているという。地元で活動する政治家が狙われやすいそうだ。
右翼の暴力の阻止や実行犯の逮捕がなかなかできない理由は、政府内にネオファシズムの大義に共鳴する向きが多いからだと結論付けることはたやすい。だが、現実はもっと複雑だ。
右翼の組織はさまざまな構造で散在し、単独犯なのか集団による共謀なのか見分けることが難しい。ネット上に興奮した怒りの表現があふれるなか、幻想ではない本物の脅威を区別することも困難だ。
あらゆる形態の右翼活動を取り締まるべきだという声もあるものの、そこまでやるとかえって過激化を加速させるという見方もある。再教育の試みは見込みがありそうだが、必要のない人を対象にしてしまう恐れもあるとシュルツは指摘する。
メルケル政権が実効ある対策を取るつもりなら、単なる警察力の増強だけでなく、もっと抜本的な対策が必要だ。この問題は与党CDUを分裂させる可能性も秘めている。
党内の右派勢力は、移民・難民危機でアンゲラ・メルケル首相主導の寛容な姿勢にいら立ちを募らせてきた。今度は、党内のリベラル派がリュブケ事件をめぐって保守派が加担したと騒ぎ立てている。一方で連立政権を支える中道左派の社会民主党(SPD)は、連立を組む過程でCDUに妥協する姿勢を見せたことに多くの有権者が失望し、支持率が低下している。
CDUが行き詰まりを打開したければ、単に過激派のネットワークを一掃するだけでは足りない。右派の怒りの方向性を変える何かが必要だ。
<本誌2019年7月16日号掲載>
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