最新記事

宇宙

イトカワ着陸から14年、はやぶさ2のサンプル採取装置の性能は実証された

2019年7月17日(水)17時30分
秋山文野

初代はやぶさで考えられた理論が生きている

それでも、サンプラホーンはゴツゴツのリュウグウの環境をものともせず、計画通りサンプル採取に成功した。それを可能にした装置の設計には、小惑星の「自然」を研究した初代はやぶさのサイエンティストによる理論が生きている。

サンプラホーンとは、はやぶさ2本体の下面に取り付けられた筒状の採取装置。ホーンの先端部分が小惑星の表面に接地するとタンタル製の弾丸が打ち出される。弾丸は砂礫に当たれば砂を巻き上げ、岩に当たれば岩を砕いて弾き飛ばす。2018年末、小惑星リュウグウと同じように炭素を含む礫を模して作られた「人工リュウグウ」に弾丸を打ち込む実験が行われた。「実験の結果、砕けて周囲に放出された礫の破片が、周りを囲む他の礫たちにビリヤードのように衝突して連鎖的に砕き、当初の想定以上のサンプル量を表面から放出させることが分かりました」(JAXA はやぶさ2プロジェクト トピックス「リュウグウに弾丸を打ち込め!」より)。

当たった対象が岩であっても、弾丸が砕くのでサンプルを採取できる。着地点の条件を選ばないことがはやぶさ2サンプル採取装置の優れた点だ。澤田さんは、「リュウグウの物質は炭素を含んでいて比較的もろいので」としながらも「自信はあった」とサンプル採取方式の強みを誇らしげに語った。

akiyama0717c.jpg

はやぶさ2のサンプリング装置。巻き上げられた砂を受け止めやすくするなどの改良がされているが、基本的な設計は初代はやぶさと同じだ。Credit: JAXA

fig1a.jpg

サンプリング装置の弾丸発射部分(地上で保管されていたはやぶさ2搭載部品と同じもの)。Credit: JAXA

fig1b.jpg

打ち出されるタンタル製の弾丸。Credit: JAXA

fig2.jpg

リュウグウを模した人工の岩石にサンプル採取装置の弾丸を撃ち込む実験が行われた。Credit: JAXA、東京大学

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

お知らせ-誤って配信した記事を削除します

ワールド

11月分食料支援の全額支給を、米控訴裁が地裁判決支

ビジネス

SUBARU、米関税で4━9月期純利益44%減 2

ワールド

高市首相の台湾有事巡る発言、中国「両岸問題への干渉
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 10
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中