最新記事

中国

中国、5Gに営業許可証発行:米のファーウェイ攻撃が中国5Gを加速化

2019年6月10日(月)10時00分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

テレビ番組のタイトルは「5Gレース」。4:30辺りから"So this is a race many people are already saying America has lost. Luckily-- and I can't believe I'm saying this-- America is lucky that you have a maniac on your team who's willing to play dirty."(だからこれは、多くの人が、アメリカは既に負けていると言っている(5Gの)競争なんですよ。しかし幸いなことに、――ああ、自分でもこんなことを自分が言うなんて信じられないんですがね、――幸いなことにアメリカのチームには汚いことをしても構わないと思っているメンバーがいるんですよね)とまくし立て、「それはトランプという人だが......」と皮肉っている。

今後の発展規模と米中対比に関する中国の視点

6月5日の中国経済網は続ける。

●クァルコムはかつて、「2035年までに、5Gは世界に12万億ドルの生産総額および2200万の職位を与える」という調査結果を出している。

●故にアメリカにとって5Gは大変重要な産業だが、アメリカはクァルコムのような端末(クライアント)設備への提供者(スマホ製造のための半導体チップ製造者)はいるが、5Gの通信設備(基地局など)の提供者がいない。

●現時点における通信設備の提供者はファーウェイ、エリクソン、ノキアとZTEしかない。だからアメリカは中国の企業を弾圧する。それでもファーウェイの技術は世界より2-3年のアドバンテージをもっている。

●5Gの標準は世界中が一緒に決めた国際標準であり、その中でも、中国の特許が30%を超えている。

●中国のキャリアは5G回線の設立に力を入れている。予定では、2019年に7-9万個の基地局を設置し、投資額は322億人民元~342億人民元になる。

●中国情報通信研究院のレポートによると、2020-2025の間に、中国5G商業利用における直接生産総額は10万億人民元、間接生産総額は24.8万億人民元に達し、300万個の職位を直接提供できるとのこと。

●中国の5G技術は世界中と共有し、ノキア、エリクソン、クアルコム、インテルとの間でも協力し、ともに協力して5Gを発展させていく。ノキアとエリクソンも中国の5G回線設立に協力している。昨年ノキアは中国移動13都市と2省の回線を共に設立する契約を交わした。

●それなのに、アメリカはコスト面でも性能面でも優れている中国の通信会社を一方的に制裁している。それはアメリカの民衆の利益、5Gの普及を阻害する行為で、結果的にアメリカでの5G商業利用コストを増やし、最終的にはアメリカ企業のイノベーションに損害を与えることになる。

以上は、あくまでも中国で起きていることと中国の視点を紹介したまでだ。「中国経済網」は中国政府の意向を反映したウェブサイトである。

この中にいくつかの真実があれば、それを日本の国益に活かすべく日本の関係者が考察をすればいいし、これらはあくまでも中国側の身勝手な論調に過ぎないと思えば見捨てればいいだけのことである。筆者はその判断材料を提供するために、中国では何が起こり、中国はそれをどう位置付けて、どのような方向に進もうとしているかを、ご参考までに紹介しているだけであることを明記しておきたい。

endo2025.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア外相と会談へ 停戦合意を

ワールド

アングル:中国企業、希少木材や高級茶をトークン化 

ワールド

和平望まないなら特別作戦の目標追求、プーチン氏がウ

ワールド

カナダ首相、対ウクライナ25億ドル追加支援発表 ゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中