最新記事

ネット

少女がプールで遊ぶだけの動画が40万回再生──YouTubeの危うい「おすすめ」機能

2019年6月6日(木)14時30分
佐藤由紀子

ホームムービーが別の思惑で閲覧される事態に...... Ruvic-REUTERS

<あどけない子どもの動画を、YouTubeが小児性愛的指向のあるユーザーへのお勧め動画として表示してしまうという機能が問題になっている>

10歳の少女が、友達と水着でプールで遊んでいるだけの動画をYouTubeに投稿したところ、短期間で40万回以上再生され、母親を驚かせた──。米New York Timesは6月3日、あどけない子どもの動画を、YouTubeが小児性愛的指向のあるユーザーへのお勧め動画として表示してしまう問題を紹介した。

この機能は機械学習アルゴリズムを採用し、ユーザーが動画を再生すると、その下に「次の動画」としてその動画を見たユーザーが好みそうな動画をリスト表示するというもの。YouTubeによると、このお勧め機能によって再生される動画は再生される動画全体の約70%を占めるという。

「次の動画」に表示される動画が段階的に過激になっていく

New York Timesは、「次の動画」に表示される動画が段階的に過激になっていくという研究者の指摘を紹介している(この現象は、「不思議の国のアリス」でアリスが落ちた穴に例えて「ウサギ穴エフェクト」と呼ばれる)。例えば、自転車の動画を見て「次の動画」で何本も関連動画を再生していると、自転車レースでのショッキングな事故の動画を勧められるようになる。性的な動画の場合、お勧めはどんどん奇妙で極端な方向に進んでいき、被写体は若くなっていく。

研究では、セックスについて話す女性の動画を再生すると、下着姿の若い女性の動画を勧められ、思春期の女性が子供服を着てポーズを取っている動画を勧められ、その先はひたすら"服を少し身につけた"子どもの動画が勧められ続けた。

勧められる子どもの動画の多くは、性的な内容を意図したものではなく、おそらく家族内で楽しむホームムービー的な感覚で両親が投稿したものだが、YouTubeのアルゴリズムは特定の好みを持つユーザーのアクティビティなどから学ぶことで、そうした動画を別の解釈で勧めるようになったとみられる。

YouTubeは対策を説明するが......

YouTubeはNew York Timesに対し、ウサギ穴エフェクトを否定したが、「子どもに関しては、お勧めのスタンスをより保守的にしていきたい」と語った。

YouTubeは、YouTube における子どもの安全というWebページで「未成年者の心と体を危険にさらすコンテンツは、YouTube で許可されていません」と謳っているが、ただのファミリービデオでも、子どもが水着姿だったり着替えていたりするコンテンツが小児性愛者に対する「次の動画」としてまとめて表示されれば、未成年者を危険にさらすことになり得る。

この報道を受け、YouTubeは同日、公式ブログで、こうした問題に対処するよう機械学習システムの改善などに取り組んでいると説明した。

例えば、保護者による監督のない未成年者(国や地域によって定義は異なる)によるライブ配信の禁止、未成年者が映っている動画へのコメント機能の無効化、未成年者が映っており、悪用される可能性のある動画の「次の動画」への表示の制限などだ。

完全排除はしない、とYouTube

コメント機能の無効化は、1月から実施されている。これは、子どもが映っているファミリー動画のコメント欄に小児性愛者向けの動画のリンクを投稿する行為が報告されたことを受けて実施した。

New York Timesは、問題に対処するためには未成年者が映っている動画を「次の動画」から完全に排除する必要があるとしているが、YouTubeは同メディアに対し、「次の動画」から排除すると動画へのアクセスが激減し、クリエイターを傷つけることになるので完全排除はしないと語った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中