最新記事

統計

主催者200万人・警察33万8千人と食い違う香港デモ参加者数 正しいのはどちら?

2019年6月25日(火)16時45分

人数推計の科学

群衆の大きさを推計する作業は非常に重要だと、英マンチェスター・メトロポリタン大のキース・スティル教授は語る。

「群衆の人数計測は、リスク査定の重要な要素だ。事前に数を推計し、容量と流れを理解することが、群衆の安全管理の鍵となる」と同教授は話す。

専門家による推計方法は、状況に応じて異なる。

移動しない群衆の場合、密度を計算することで推計できる。例えば、1平方メートル当たりの人数を数え、群衆全体が占める面積にかけ合わせて積を求めるのだ。

スティル教授によると、このやり方の問題点は、群衆の密度が場所によって異なる可能性があることだ。

デモ行進の時間や場所で人の密度がどれほど変わるかを示すため、ロイターは実際に人数を調べてみた。

9日と16日撮影されたデモ隊の中心部では、1平方メートル当たり1人から4人と、密度に幅があった。デモ隊の末端や、デモのごく初期や末期では、より密度が低かったと考えられる。

起点と終点を含む主要なデモルートの面積は、約14万5000平方メートルだった。写真で示された密度の平均を使って計算すると、大体11万6000人から58万人がこのスペースを占めた計算になる。

だが一日を通じて、新たな参加者が起点に加わり、その一方で終点に到着して帰路につく人がいた。常に人の流れがあったことと、道が長く狭いこと、そして長時間抗議活動が続いたことを考えれば、上記の数字は群衆をほんの一瞬切り取った数字でしかない。

人の流れを計算する

デモ行進では、人の流れを計測する方が、より群集の人数把握に適した方法だとスティル教授は言う。

デモ行進のルート上のある地点(一番細い場所であることが望ましい)の幅を測り、一定の時間内にそこを通過した人の数を計測することで、行進が続いた時間の長さを使って全体数を計算することができる。

この方法は、この地点を通過後に新たに加わった人がいないことを前提にしている。そのため、終点に近い場所を選ぶのが理想的だ。

ヘネシー・ロードと天楽里の交差点付近付近のデモ隊の流れを撮影したタイムラプス(低速度撮影)動画を見ると、網目のような道を抜けてくる人も多く、何度も止まっては動いている。

一番最近の行進では、デモ参加者が平行して走る道にも流れ込み、参加人数の推計を一層困難にした。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ住民の50%超が不公平な和平を懸念=世論

ワールド

北朝鮮、日米のミサイル共同生産合意を批判 「安保リ

ビジネス

相互関税「即時発効」と米政権、トランプ氏が2日発表

ビジネス

EQT、日本の不動産部門責任者にKKR幹部を任命
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中