最新記事

日本社会

平成に給料がほとんど上がらなかった5つの要因 平均上昇額はわずか7万円程度

2019年3月8日(金)18時00分
岩崎 博充(経済ジャーナリスト) *東洋経済オンラインからの転載

安倍政権は、史上最長の好景気によって有効求人倍率を大幅にアップさせ、新規雇用者数も増加させたと胸をはるが、それが本当であれば、実質賃金の下落は説明できない。

「労働組合」の弱体化と「非正規雇用」の増加?

日本の賃金が上昇しない原因については、さまざまなシンクタンクやエコノミストが分析しているが、大きく分けて5つの段階に分けて考えればわかりやすいかもしれない。次の通りだ。


①労働組合の弱体化
②非正規雇用者の増加
③少子高齢化の影響
④内部留保を貯め込んで賃金を上げない経営者
⑤規制緩和の遅れがもたらした賃金低迷

順に見ていこう。

<①労働組合の弱体化>
日本はバブル崩壊によって1990年代以降、景気後退を余儀なくされた。欧米のように、景気低迷に対しては人員カットで対応するのではなく、雇用を維持しながらも賃金で調整する、という方法がとられた。

労働組合も、クビにされるよりも給料を下げることに同意し、ここで日本特有の労使関係ができあがったといっていい。

周知のように、アメリカでは景気が悪くなれば20年勤続の従業員であろうと、即座に人員をカットする。欧州もアメリカほどではないが、必要とあれば労働組合も整理解雇を認めるというスタンスだ。日産自動車を救ったカルロス・ゴーン元会長が、コストカッターとして数多くの従業員のクビを切ったように、日本とは違って欧米諸国は「問題を先送りにしない」という姿勢を持っている。

要するに、日本の労働組合は自分たちの組合員を守るために、戦う牙をなくし、会社側=経営陣に忖度し、会社側の要望を聞き入れる体質になってしまった側面が否定できない。

こうした背景には、労働組合の構造的な問題があるといわれている。日本の労働組合は、企業ごとに組合が設立されている「企業内組合」が一般的であり、欧州などの「産業別労働組合」とは異なる。企業内組合の場合、どうしても経営陣との交渉の中できちんとした行動を起こせないという構造的な弱点がある。業績が悪化すれば、素直にベースアップの減額にも応じてしまうのだ。

<②非正規雇用者の増加>
小泉政権時代に行われた「労働者派遣法の改正」によって、日本の雇用形態は大きな変革を迫られた。企業は賃金の低い非正規雇用者を雇いやすくなった。実質賃金低迷の原因の1つとして、見逃すことはできない。

これには人件費を削減して、業績悪化から企業を守った面はある。しかし、今となっては日本企業があの時期にもっと海外にきちんと進出していれば、日本企業はもっと成長できた可能性はあるし、グローバルな企業に成長していたかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル外相「終わりのない戦争望まず」、終結時期

ワールド

G7エネ相、備蓄放出含め対応すること確認 IEAも

ワールド

レバノン人道危機が深刻化、子ども84人死亡・66万

ワールド

ホルムズ海峡「平和か苦難」いずれかに、イラン安保ト
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 5
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 6
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 7
    身長や外見も審査され、軍隊並みの訓練を受ける...中…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    トランプも無視できない? イランで浮上した「危機管…
  • 10
    50代から急増!? 「老け込む人」に共通する体の異変【…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 8
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中