最新記事

ロケット

姿を現した、イーロン・マスクの「月ロケット」のエンジン

2019年2月4日(月)19時20分
鳥嶋真也

スターシップに装備するロケットエンジン「ラプター」 (C) Elon Musk/SpaceX

宇宙企業スペースXを率いるイーロン・マスク氏は2019年2月1日、開発中の巨大宇宙船「スターシップ(Starship)」のロケットエンジン「ラプター(Raptor)」を公開した。

ZOZO前澤氏が乗って月飛行をする宇宙船でもあるスターシップは、現在試験機の建造が進んでおり、今年春以降にも試験飛行が始まる予定になっている。

スターシップとラプター

スターシップは、スペースXが開発中の宇宙船で、最大100人の乗客、もしくは100トンの物資を月や火星に運ぶことができる。2018年9月には、ZOZOの前澤友作氏が、この宇宙船で月飛行を行うと発表して大きな話題になった。

打ち上げには「スーパー・ヘヴィ(Super Heavy)」という専用の巨大ロケットを使う。機体の直径9m、両者を合わせた打ち上げ時の全長は100mをゆうに超えるなど、性能も機体の大きさもまさに規格外である。さらに、機体は繰り返し再使用でき、打ち上げコストを大幅に低減できるとしている。

そして、このスターシップとスーパー・ヘヴィに装備されるロケットエンジンが「ラプター」である。

ラプターは液体酸素とメタンを推進剤に使う。メタンは理論上、比較的高い性能が発揮しやすく、また低コストであるため開発や運用がしやすい。さらにススが発生しないため、エンジンの再使用もしやすいといった特長をもつ。

なにより、火星の環境使ってメタンを生成できることから、火星に飛行した際に、燃料の"現地調達"ができるという利点もある。

さらにラプターは、エンジンを動かす仕組みに「フル・フロウ二段燃焼サイクル」と呼ばれる技術を採用している。この技術は、理論上、最高の効率が得られるうえに、エンジンの耐久性や信頼性の向上も図れるなど、数々の利点がある。しかし、それと引き換えに複雑な構造、技術が要求されるため、これまでに実用化に成功した例はない。

実際、ラプターの開発も、数年前から始まっていることがわかっているが、これまでに何度も設計や、目標性能の変更が行われており、開発の困難さがわかる。

今回マスク氏が明らかにしたところでは、テキサス州のスペースXの施設において、まもなくこのエンジンの燃焼試験を始めるとしており、まずはやや低めの性能を狙い(それでも月へ飛行するには十分な性能である)、ゆくゆくは設計の最適化や改良による性能向上を図るとしている。

torishima0204b.jpg

ラプター (C) Elon Musk/SpaceX

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英BP、第2四半期は原油安の影響受ける見込み 上流

ビジネス

アングル:変わる消費、百貨店が適応模索 インバウン

ビジネス

世界株式指標、来年半ばまでに約5%上昇へ=シティグ

ビジネス

良品計画、25年8月期の営業益予想を700億円へ上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 10
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中