中共中央「マリオ」パクリと即刻削除の怪を読み解く――中国政府高官を取材
Q:まず、そうすべきですよ。
A:いや、しかし一方で不思議なのは、なぜ任天堂が中国政府に対する抗議声明を出さないのかということだ。むしろ、アメリカのように、日本の企業も中国政府を提訴すればいいと思っているくらいだ。そうすれば、中国政府も何らかの反応を示すしかなくなる。
Q:提訴するとか、抗議声明を出してほしいと思っているのですか?
A:してほしいというより、そうすべきではないかと思うのだが、任天堂はそうしていない。
Q:日本のメディアでも「任天堂は個別の案件に関してはコメントを控える」と言っていると報道しています。
A:そこなのだが......、ここからは想像だから責任のあることは言えないが、思うに、任天堂と政法委系列の関係部門は、何らかの交渉をしたのではないかと思う。政法委は経済的利益を求める組織ではないが、任天堂は中国でもビジネスを展開しているわけだから、それなりの今後のビジネス上の利害を考えたのではないかと......。
Q:しかし、これまでにも「クレヨンしんちゃん」とか「ウルトラマン」とか、中国は色々と著作権侵害をしていますよね。でも、裁判には多くの年月がかかり、しかも中国の対応はひどすぎる。
A:でも、彼らは堂々と抗議し、提訴している。その方が中国も反省するし、少しは進歩していくかもしれない。
拿来(ナーライ/だらい)主義――中国のパクリ文化
Q:中国がそういう精神面で進歩するでしょうか?中国には魯迅(ろじん)以来の拿来主義があるので、パクリに対して、少しも罪の意識がないのではないですか?
(注)拿来主義とは、2014年12月9日付のコラム「中国のパクリ文化はどこから?――日本アニメ大好き人間を育てたのも海賊版」に書いたように、1934年6月7日に魯迅が雑誌『中華日報・動向』に「拿来主義」という文章を載せたことから来ている。「拿来」は中国語では「ナーライ」、日本語では「だらい」と読み、「どこかから持ってくる」という意味だ。英語で表現すると"copinism"(コピー主義)とか"by borrowed method"(借りた方法で)などとなる。魯迅は、「立ち遅れた中国の文化や技術を前進させるには、すでに存在する海外の優れた文化や技術を取り入れた方が早い」と述べている。
A:その通りだ。中国はまだその認識が立ち遅れている。著作権というか、知的財産権に対する認識が甘すぎる。それが改善されなければ、真に発展したとは言えない。