フィリピン南部にイスラム教徒の自治政府が誕生? 住民投票実施したドゥテルテの狙いとは
モロイスラム解放戦線のアル・ハジ・ムラド・イブラヒム議長も住民投票に参加 Marconi Navales - REUTERS
<2017年、イスラム武装組織と国軍が激しい市街戦を繰り広げたミンダナオ島。その一部地域でイスラム教徒による自治政府参加を問う住民投票が行われた>
フィリピンの南部ミンダナオ島の自治地域とその周辺地域でイスラム教徒による自治を認めた「バンサモロ基本法」に基づき、自治地域加入の是非を問う住民投票が1月21日に行われた。投票結果が確定するには数日かかる見通しとなっている。
住民投票が実施されたのは同島西部にあるムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)に所属するバシラン州などとその周辺のコタバロ市、北ラナオ州、コタバト州、スルタン・クダラット州などで有権者は約284万人。投票では「バンサモロ基本法」に基づくイスラム自治政府に各地域が参加するかどうかの是非を問うている。
フィリピンは人口の約93%がキリスト教徒でそのうち83%がカトリック信者というキリスト教徒が多数派の国であるが、イスラム教徒も全人口の約5%存在し、南部ミンダナオ島などではイスラム教徒は人口の20%を超えている。イスラム教徒は長年中央政府に対し独立と自治を求めて武装闘争を含めた抵抗運動を続けてきた歴史があり、何度となく和平交渉がもたれたが、恒久的な和平の完全実現には至っていない。
今回の投票結果で過半数が賛成した自治体はイスラム自治政府に編入されることになり、和平実現に向けた大きな一歩となるとみられている。
2018年7月に成立した「バンサモロ基本法」によれば、自治政府には高度な自治が認められ、予算の立案、執行権が付与されるほか、地域内のイスラム教徒にはイスラム法に基づく司法制度も適用されることになる。
このため今回の住民投票によって、武装闘争を続けている「モロイスラム解放戦線(MILF)」などイスラム武装組織との間で紛争解決、和平実現に向けた具体的な動きが加速するものと期待されている。