最新記事

宇宙開発

中国、月裏側軟着陸成功――華麗なアメリカ、実利の中国

2019年1月4日(金)21時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

2018年12月8日に打ち上げられた中国の月面探査機 REUTERS

1月3日、中国の無人月面探査機が世界初となる月面裏側への軟着陸に成功した。ヘリウム3採取のための月面基地を創るだろう。1日にはアメリカNASA無人探査機が人類史上最も遠い天体に最接近。米中宇宙対決のゆくえは?

華麗で夢がある「ニュー・ホライズンズ」

1月1日、NASAの小惑星探査機「ニュー・ホライズンズ」が、人類の宇宙探査史上で最も遠い天体「ウルティマトゥーレ」に最接近したと報道された。そのタイミングに合わせてギタリストで宇宙物理学博士のブライアン・メイが「ニュー・ホライズンズ」という曲をリリースしたという。

1月3日のAFP報道によると、フライバイ(接近通過)した探査機「ニュー・ホライズンズ」が撮影した天体「ウルティマトゥーレ」は、巨大な雪だるまのような形をしていたとのこと。それまであった画像は不鮮明で、殻つきの落花生のような細長い形に見えていたようだが、雪だるまの画像は、もう少し丸くて鮮明だった。なにしろ「ウルティマトゥーレ」は地球から約64億キロも先の宇宙空間に浮かぶ天体なので、それを撮影しただけでも素晴らしいことだ。これは地球から最も遠いだけでなく、最も古い可能性もあると、NASAの科学者の話として、AFPが伝えている。

探査機名に合わせて曲をリリースするなど、なんとも華麗で夢がある。

実利的な目的を持つ中国の月面探査機「嫦娥」

その一方で、中国が、これもまた人類史上初めて月面裏側への軟着陸に成功させた探査機「嫦娥(じょうが)4号」は、かなり明確な目的を持っている。

第一の目的は月の資源であるヘリウム3を採取することだ。なぜなら月面には磁場がないため、太陽で起こった核融合反応の生成物の一部であるヘリウム3が、太陽風に乗って月面に吹きつけられ、そのうちの100万トンが月の土壌表面に捕獲されていると言われているからだ。かつてアポロ計画で月探査船が持ち帰った土壌からもこのことが示されている。

いずれかの日に、これを地球に大量に持ち帰って核融合発電させ、エネルギーとして使おうというのが中国の目的である。もし成功すれば、全地球の10倍以上のエネルギーを得ることができるようになると、一部では言われている。

中国の核融合研究は欧米よりも遅くスタートしているが、安徽省合肥市にある中国政府のアカデミー中国科学院の合肥物質科学研究院が、2018年11月12日、同研究所の核融合装置で中国初の「人工太陽」が完成したと中国政府系メディアが報じた。「人工太陽」が完成したということは、原子核と電子が飛び回るプラズマの電子温度を1億度以上に加熱することに成功したということだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

トランプ氏側近、大半の輸入品に20%程度の関税案 

ビジネス

ECB、インフレ予想通りなら4月に利下げを=フィン

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与

ビジネス

英インフレ期待上昇を懸念、現時点では安定=グリーン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中