最新記事

日本の宇宙開発

日本の次世代ロケット「H3」の打ち上げを支える新型車両が公開された

2018年12月10日(月)19時30分
鳥嶋真也

報道公開された「H3ロケット用新型ML運搬台車」。H3ロケットを大型ロケット組立棟から射座へ運ぶために使う(筆者撮影)

三菱重工と宇宙航空研究開発機構(JAXA)、日本車輌製造は2018年12月5日、日本車輌製造の衣浦製作所(愛知県半田市)において、次期大型基幹ロケット「H3」を運ぶための運搬台車を報道公開した。

「ドーリー」という愛称でも呼ばれるこの台車は、ロケットを発射台ごと持ち上げ、ロケットを組み立てる建物から発射場所まで運ぶ"縁の下の力持ち"。台車はこのあと種子島宇宙センターへ送り、試験などを行ったのち、2020年度に予定しているH3の初打ち上げから運用を行う。

H3ロケット用新型ML運搬台車とは

「H3ロケット用新型ML運搬台車」と呼ばれるこの台車は、H3ロケットを載せた移動発射台(ML)を、種子島宇宙センターの大型ロケット組立棟(VAB、ロケットを組み立てる建物)から、射座(発射場所)まで運ぶ役割をもつ。

ロケットの発射台というと、地面にしっかり固定されたものというイメージがあるかもしれない。実際、他国ではそうした仕組みのもあるが、日本の主力大型ロケットであるH-IIA、H-IIB、そして開発中の次世代ロケットH3では、発射する場所が複数あることや、敷地の制約などの都合もあり、移動式の発射台を採用している。

また移動式の場合でも、他国では鉄道で運ぶものが多いが、日本では専用の台車を使って運ぶ方式が採られている。

現在運用中のH-IIAロケット、H-IIBロケットで使われている台車は、製造から20年が経過することなどから、H3ロケットの開発に合わせ、台車も新規開発を決定。JAXAの要求に基づき、三菱重工が詳細仕様を決め、日本車輌製造が設計や開発、製造を行った。

1台あたりの全長は約25m、高さ・幅は約3m。台車は2台が1組となって並走してH3ロケットを運び、積載能力は1460トンにもなる。最高速度は約2km/hで、VABから射座までの約500mの距離を、約30分かけて運ぶ。

space1210b.jpg

H3が打ち上げられる種子島宇宙センターの大型ロケット発射場。台車はH3ロケットが載った発射台を、左の大きな建物(VAB)から、中央やや右にある鉄塔の部分(第2射点)まで運ぶ(筆者撮影)

タイヤの数は合計56本にもなり、まるでムカデのような姿かたちをしている。タイヤは2台1組で、それぞれにステアリング機構があり、車体の前後でハの字にして旋回したり、さらにすべて同じ向きにして斜めに走行したり、カニのように横移動したりと、自由自在に走行することができる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

小林氏が総裁選へ正式出馬表明、時限的定率減税や太陽

ワールド

アルゼンチン予算案、財政均衡に重点 選挙控え社会保

ワールド

タイ新首相、通貨高問題で緊急対応必要と表明

ワールド

米政権、コロンビアやベネズエラを麻薬対策失敗国に指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中