最新記事

ヘルス

ブルーライトのダメージで視力低下や失明も

Blue Light Dangers

2018年11月2日(金)16時40分
リサ・スピアー

米大学の最新研究で視細胞がダメージを受けるメカニズムが判明 TOMMASO79/iStock.

<スマホやパソコンの画面から出るブルーライトが目の網膜を傷つけるメカニズムが明らかに>

スマートフォンやパソコンの画面から出るブルーライトが目の網膜を傷つけ、視力低下につながることはよく知られている。だが最近の研究で、失明を加速させかねないことも分かった。

視野の中心部分が見えなくなる黄斑変性症は、高齢者に比較的多い病気だ。ブルーライトを見続けると、光を感知する網膜の視細胞が反応して黄斑変性症のダメージを加速させる恐れがあると、米トレド大学の研究者らが7月5日付の英オンライン学術誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。

ブルーライトというとスマホやパソコンを思い浮かべがちだが、太陽光や蛍光灯、蛍光電球、LED照明などの光にも含まれている。「私たちは絶えずブルーライトにさらされており、目の角膜やレンズでは遮断したり反射させたりできない」と、トレド大学のアジス・カルナラスネ助教(化学・生化学)は言う。

黄斑変性症は網膜の視細胞が死滅することによって起きる病気で、発症年齢は普通50~60歳だ。アメリカでは視力低下や失明の原因の第1位。疾病対策センター(CDC)によれば、新聞を読んだり、車を運転したりするのが難しくなるなど日常生活に支障をきたす恐れがあるという。

研究チームは、ブルーライトと網膜上の信号伝達物質が反応して、視細胞を死滅させかねない有害な化学分子を生じさせることを発見。網膜の視細胞は再生しないだけに厄介だ。

目と体に存在するビタミンE由来の抗酸化物質α‐トコフェロールによって、視細胞の死滅を防げる可能性も明らかになった。だが加齢とともに有害な分子と戦う能力は失われ、「その結果、深刻なダメージが起きる」と、カルナラスネは警告する。

研究チームはテレビやスマホやタブレットの画面が発する光を測定し、日常的にブルーライトにさらされる場合の目の反応をさらに詳しく調べている。「ハイテク時代に子供たちの視力を守る方法を突き止めたい」と、カルナラスネは言う。

それまでは暗闇でスマホなどを見るのは避け、ブルーライトをカットするサングラスを掛けるなどして目を守るべきだ。

<本誌2018年10月30日号掲載>

[2018年11月30日号掲載]

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界

ワールド

アングル:米援助削減で揺らぐ命綱、ケニアの子どもの

ワールド

訂正-中国、簡素化した新たなレアアース輸出許可を付

ワールド

情報BOX:米国防権限法成立へ、ウクライナ支援や中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中