最新記事

日韓関係

日韓共同宣言から20年 韓国の日本文化開放はどこまで進んだ?

2018年11月28日(水)19時13分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

劇場上映は自由化されたが


折しも、11月28日〜12月2日までソウルでは2000年代に韓国国内で上映され人気を集めた日本映画を上映する「2000年代、魔法にかかった日本映画」という上映会が行われている。 엣나인 / YouTube

このように時間をかけて日本映画の劇場上映に関しては完全開放となったが、地上波TV放送ではいまだに日本のドラマ、映画などが放送できない。また、DVD化やネット配信についても韓国内で劇場公開済みでなければならないという条件付きになっている。

これによりビデオスルー(劇場公開せずにビデオ販売させること)ができず、公開するまでもないがビデオで日の目を見るような隠れた名作が紹介される機会がないのだ。韓国ではビデオなどの二次版権市場がすでに崩壊しているが、もしも上映されていなくても直接パッケージ発売されるようになったら、マニア層を狙った作品も多く買い付けされるようになり、紹介される映画の多様性にもつながる可能性もあるはずである。

さて、第4次以降すっかり静まり返っている文化開放だが、第5次開放はいつ頃になるのか。2011年頃、論議されたものの、その後いつの間にか立ち消えになってしまった。文化、芸術と政治的な部分は切り離して成り立って欲しいものだが、日韓関係においてはなかなか難しいのは歴史的に見ても明らかである。

しかし、文化の発展をしようとするならば、たくさんの芸術家たちと交流をもち、多様な作品に触れることが大事だ。それは国内だけでなく国を越え海外に羽ばたいていく対策のためとしても、その国々の作品を知る必要がある。もちろん反日感情を考慮することも大事な事だろう。しかし、「日本の映画だから見る人がいない」などと言うのではなく、政治的な部分から切り離れたところで、いつか純粋に良い映画作品やTV作品を多様なメディアで自由に観られる日が来ることを望んでいる。


AKBメンバーが参加して話題となったオーディション番組「PRODUCE48」。放送したMnetはケーブル放送局だったので日本語での歌もOKだったが...... Mnet Official/ YouTube

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マクロスコープ:高市氏は来年どう臨む、解散で安定政

ワールド

中国、26年に都市再開発・住宅市場安定化の取り組み

ビジネス

午後3時のドルは156円ちょうど付近へ反落、日銀利

ビジネス

金が最高値更新、米・ベネズエラ緊張で 銀も最高値
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中