最新記事

交通

日本でラウンドアバウト(環状交差点)が少しずつ増えているのをご存知ですか?

2018年10月29日(月)15時05分
内村コースケ(フォトジャーナリスト)

地元車両や観光客の自転車が行き来する「六本辻ラウンドアバウト」=長野県軽井沢町 撮影:内村コースケ

<渋滞、信号待ち、右折待ち・・・。車を運転している時のストレスの多くは信号交差点に起因する「待ち時間」によるものだ。そうした要素が軽減され、事故防止や景観上のメリットもあるという環状交差点「ラウンドアバウト」が、近年全国に少しずつ増えているのをご存知だろうか。その普及促進を目指す「ラウンドアバウト・サミット」が、今月25・26日、長野県軽井沢町で開かれた。>

イギリスなどで普及する「ラウンドアバウト」

ラウンドアバウトは、自動車に比べて回転半径が大きい辻馬車が普及していたフランスやイギリスで採用された円形交差点が元になっている。自動車道路用の現代的ラウンドアバウトは、1960年代にイギリスで誕生し、現在までに欧州やオーストラリアなどの英連邦国家、アメリカなどで普及している。イギリスは1993年に現代的ラウンドアバウトの統一基準(ガイドライン)を発行。アメリカでも2000年に全米ガイドラインできた。欧米のラウンドアバウトは、パリ中心部の凱旋門があるシャルル・ド・ゴール広場のような大規模なものから、田舎町の小さな十字路までサイズや分岐の数はさまざまだ。

ラウンドアバウトには、信号も一時停止線もない(一部例外あり)。環道内を通行する車両が優先で、侵入車は徐行でアプローチし、交通の流れを見極めながら合流する。環道内は一方通行(左側通行の日本やイギリスの場合は右回り)で、交差路には常に左折(左回りでは右折)で出ていく。信号待ちがないためスムーズに交通が流れ、渋滞が軽減されるケースが多い。安全面では、出会い頭の衝突事故の可能性は残るものの、徐行で環道に入るので重大事故のリスクは低いとされる。また、信号のための電力を必要としないため、災害に強いというメリットもある。

筆者は子供の頃、ロンドンに住んでいた時期があり、日常的に両親が運転する車で移動していた。その経験上、上記のようなメリットは実感としてある。帰国後、自分で運転するようになってから現在に至るまで、信号待ちの多い日本の道路の効率の低さや、右折時の危険性を感じざるを得ない。もう一つ、あまり言われていないラウンドアバウトのメリットと言えば、うっかり者の両親がよくやっていたことだが、行きたい道を曲がり損ねても、もう1周すれば簡単・安全にリカバリーできる点だろう。土地勘のない観光客などにも優しい設計だ。

ラウンドアバウト化で事故ゼロに

uchimura102901.jpg

全国から導入自治体関係者らが集まった「ラウンドアバウト・サミットin軽井沢」=長野県軽井沢町

日本では、2013年の改正道路交通法により現代的ラウンドアバウトが定義され、現在までに30都道府県に78カ所が新設または既存交差点から改良された。2011年11月に供用開始した長野県飯田市の「吾妻町ラウンドアバウト」が全国初。環道優先ではない従来型のロータリー式交差点をラウンドアバウト化したもので、翌年には中心市街地に新設の「東和町ラウンドアバウト」も完成した。同市では中央自動車道・座光寺スマートICの設置に伴い、新たなラウンドアバウトも計画中だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

パキスタンで日本人乗った車に自爆攻撃、1人負傷 警

ビジネス

24年の独成長率は0.3%に 政府が小幅上方修正=

ビジネス

ノルウェー政府系ファンド、ゴールドマン会長・CEO

ビジネス

米株「恐怖指数」が10月以来の高水準、米利下げや中
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中