最新記事

エアライン大革命

都会の空を「空飛ぶタクシー」が行き交う日は近い

UBERING AHEAD

2018年10月9日(火)17時10分
クライブ・アービング(航空ジャーナリスト)

181009uber.jpg

UBER/HUMPHREYS & PARTNERS ARCHITECTS

だが真の問題は、都市の低空域が過密状態になった場合、果たして安全に管理できるかどうかだ。ウーバーの空飛ぶタクシーはヘリコプター(緊急搬送用ヘリも含む)や、アマゾン・ドットコムなどが使用予定の配達用ドローンと、この空域を共用することになる。

ウーバーはこの問題を解決するため、NASAと提携して人工知能(AI)を使用した新しい航空管制技術の開発に取り組んでいる。この新システムでは、人間ではなくロボットによる航空管制が想定されており、無人自動運転車と同じ認識技術が使用されるという。

車で11時間の移動を2時間に

一方、地域航空での使用が想定される新世代の電動小型コミューター機(Eコミューター)は、都市低空域の管制問題とは無縁だ。これらの電動航空機は既存の空港と、いま日常的に使われている巡航高度の空域を利用することになる。

想定されるライバルは、渋滞する高速道路だ。Eコミューターは最大約1100キロのルートを時速550キロ前後で飛行する性能を持ち、車で11時間かかる移動を約2時間に短縮できる。

Eコミューターの1号機は、米新興企業ズーナム・エアロの手で開発が進められている。最初のモデルは12人までの乗客を運べるという。エンジンは電力だが、通常のジェット燃料を使うバックアップ用の小さな発電機を備え、バッテリーをフル充電状態に保つ。

これでも燃料使用効率はジェットエンジンより50%ほど高い。加えて排気ガスはゼロで、騒音もほとんどない。もっと強力なエンジンが開発できれば、将来は今よりずっと大きな電動航空機が登場するはずだ。

ズーナムは既にボーイングと米格安航空会社ジェットブルー・エアウェイズの出資と協力を取り付けた。ボーイングはズーナムとの協業を通じ、電動エンジン技術の強化を図っている。ジェットブルーにはEコミューターを使用した短距離都市間ネットワークを新たに構築し、もっと距離の長い国内・国際線の既存ネットワークと連結する構想がある。

電動エンジンはコスト面のメリットも大きい。ジェット燃料の座席当たり平均コストは6.9セント/キロ。ズーナムのEコミューターなら、この費用を5セントに減らせるという。

ズーナムは来年中の初フライトと、22年の商用飛行開始を目指している。

一方、エアバスのE-Fanは既に試作機としての役目を終えて引退した。次のステップは、ズーナムより大きい座席数100のハイブリッド機の開発だ。エンジンはロールスロイス社製で、現行の電動エンジンの8倍の出力があるという。

E-Fanの機体は博物館行きとなりそうだ。いずれは航空史を飾る重要な飛行機として、ライト兄弟のフライヤー号や初の商用ジェット機と並び称される日が来る可能性は十分にある。

<本誌2018年10月02日号「特集:エアライン大革命」より転載>

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テキサス州洪水の死者43人に、子ども15人犠牲 

ワールド

マスク氏、「アメリカ党」結成と投稿 中間選挙にらみ

ビジネス

アングル:プラダ「炎上」が商機に、インドの伝統的サ

ワールド

イスラエル、カタールに代表団派遣へ ハマスの停戦条
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中