最新記事

天文学

理論上「ありえない星」見つかる:中性子星の強い磁場を突破するジェットを観測

2018年9月28日(金)16時30分
高森郁哉

「定説を覆す発見」 ICRAR/University of Amsterdam

<科学系メディアが「存在するはずのない星」「定説を覆す発見」と驚きをもって報じる、従来の天文学を越えた中性子星が観測された>

強力な磁場を持つにもかかわらずジェットを放出する中性子星

地球から約2万4000光年離れたカシオペア座の中に位置する連星「Swift J0243.6+6124」の伴星である中性子星が、極めて強力な磁場を持つにもかかわらずジェットを放出していることが観測された。

従来の天文学では磁場の弱い中性子星からしかジェットは放出されないと考えられており、科学系メディアが「存在するはずのない星」「定説を覆す発見」と驚きをもって報じている。

アムステルダム大学の研究者らによる論文が学術誌「ネイチャー」に掲載され、「ザ・カンバセーション」「サイエンス・アラート」などが報じた。

Swift J0243.6+6124は、共通の重心のまわりを公転する主星と伴星からなる連星で、米航空宇宙局(NASA)の観測衛星「スウィフト」が2017年10月に発見した。この伴星は、恒星が進化した最晩年の天体の一種である中性子星で、主に中性子でできている。

太陽より約1兆倍強い磁場を持つ

アムステルダム大の研究チームは、米ニューメキシコ州にあるカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群から得た観測データを分析。この中性子星が太陽より約1兆倍強い磁場を持ちながら、周囲に形成された降着円盤(ガスと塵の集まり)の物質とエネルギーを両極からジェット状に噴き出していることを明らかにした。これまでジェットの噴出が観測された中性子星は、Swift J0243.6+6124の中性子星に比べて磁場の強さが1000分の1以下だったという。

研究者らは、中性子星の磁場とジェットに関する従来の定説を再考する必要があるかもしれない、と述べている。

理論上「ありえない星」の解説動画

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ドイツ議会、540億ドル規模の企業減税可決 経済立

ワールド

ガザの援助拠点・支援隊列ルートで計798人殺害、国

ワールド

米中外相が対面で初会談、「建設的」とルビオ氏 解決

ビジネス

独VW、中国合弁工場閉鎖へ 生産すでに停止=独紙
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 6
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 9
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 10
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中