最新記事

教育

東大が入学試験にぶっ込む「頭のよさを測る」問題 日本最高の教育機関が求める能力とは?

2018年9月28日(金)11時45分
西岡 壱誠 (東京大学3年生)*東洋経済オンラインより転載

先程から僕は「知識」という言葉を多用していますが、活かせない知識は「知識」でも「教養」でもなく、ただの「情報」なのではないでしょうか。

多くの情報に触れること自体には何の意味もない。逆に、情報過多で不自由になってしまうこともある。それよりも、少ない知識でもいいから、それをちゃんと使いこなせるようになること。そういう能力が「関連づける」力であり、頭のよさの源泉なのではないでしょうか。

「関連づける力」=「つなげる力」

「関連づける」をよりわかりやすく言うならば、「つなげる」ということだと思います。

たとえば、「オーストラリア」→「南半球」→「季節が逆」とつなげられれば、先程の問題は簡単に解けたはずです。または、普段食べている野菜の原産地を、一度でも自分の持っている知識とつなげて考察してみた経験のある人なら、解けるはずです。

こんなふうに、科目や分野にかかわらず、何かと何かをつなげて思考を深めることができる状態が「頭がいい」ということなのではないでしょうか。

東大の授業も、「つなげて考える」ことを念頭に置いた授業が多いです。「ゴジラが東京タワーを壊した回数から、日本人とアメリカ人との建設物に対する考え方の違いを考えてみよう」とか、「日本食がなぜ美味しいかを考えることで、化学を深く理解できる」とか、そういう「卑近なものとつなげて考えることで、新たな学問的知識を得る授業」を僕は東大で受けています。

そして東大生もまた、自分の持つ知識を「つなげる」ことで、より多くの知識を得ています。たとえば僕は、よく授業後に友達と感想を言い合うのですが、そこでは毎回、最近話題のニュースと絡めて意見を言う人がいます。「さっきの行動経済学の話は、オリンピックのボランティアにも応用できる話だよね」とか、「さっき勉強した思想は、トランプ大統領を例に考えると理解しやすいと思うんだ」とか。

ニュースや日常の出来事など、どんな些細な身の回りのことでもいいから、まったく関係ないと思われるような情報と情報とをつなげ、それを学問の出発点とする力がある人が、勉強ができる人なのです。

だからこそオススメしたいのが、身の回りのことから自分の知識をつなげてみようとする勉強法です。

以前「東大の入試問題は難しすぎると思う人の盲点」でも紹介させていただきましたが、「正しいバスの時刻表を選べ」という前代未聞の問題が東大で出題されたことがありました。

5190dH8jAKL._SX349_BO1,204,203,200_.jpg

『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』は発売1カ月で12万部のベストセラーとなっている

この問題も「つなげる力」を聞いています。「都会では朝は通勤ラッシュだ」とか「過疎地域ではバスの本数が少ない」とか、そんな身の回りの当たり前の知識を、時刻表とつなげることができれば答えを導けるものでした。「バス停の時刻表」でも「かぼちゃ」でも、実はなんでも学問の入り口になるのです。

「頭がよくなりたい」と考えると、私たちは「知識量を増やす」ことに重点を置きがちです。しかし、実は大切なのは「つなげられる知識」を増やし、「つなげる」ことを実践すること。難しい本ばかりたくさん読むのではなく、簡単な本を何度も読んだり、日常から学ぶ姿勢を忘れてはならないということなのかもしれません。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日銀、保有ETFの売却開始を決定 金利据え置きには

ワールド

米国、インドへの関税緩和の可能性=印主席経済顧問

ワールド

自公立党首が会談、給付付き税額控除の協議体構築で合

ビジネス

多国発行ステーブルコインの規則明確化するべき=イタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中