最新記事

シリア情勢

シリア反体制派の最後の牙城への総攻撃はひとまず回避された──その複雑な事情とは

2018年9月20日(木)19時40分
青山弘之(東京外国語大学教授)

シリア北西部のイドリブ県の地下避難所 REUTERS/Khalil Ashawi

<反体制派にとって最後の牙城イドリブ県で、シリア内戦における「最後の戦い」が猶予されたことは何を意味するのか?>

シリア北西部のイドリブ県に対する総攻撃はひとまず回避された。反体制派を支援するトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と、シリア政府を後押しするロシアのヴラジミール・プーチン大統領が17日のソチでの首脳会談で、同地に非武装地帯を設置することを合意したためだ。反体制派にとって最後の牙城となったイドリブ県で、シリア内戦における「最後の戦い」が猶予されたことは何を意味するのか?

ロシア・トルコ首脳会談での合意

反体制系サイト(Eldorar.com)が公開した全文(アラビア語訳)によると、ロシア・トルコ首脳会談での合意は以下10項目からなっている。

1. イドリブ県の緊張緩和地帯(第1ゾーン)を維持するとともに、トルコの監視所を強化、その活動を継続させる。
2. ロシアは、イドリブ県に対する軍事作戦と攻撃の実施を回避し、現状を維持するために必要なあらゆる措置を講じる。
3. 幅15〜20キロからなる非武装地帯(地図1を参照)を設置する。
4. 非武装地帯の境界線については、継続協議をもって画定する。
5. 10月15日までに非武装地帯内からすべての過激なテロ集団を排除する。
6. 10月10日までに非武装地帯から当事者が保有するすべての戦車、多連装ロケット砲、大砲、迫撃砲を撤去する。
7. トルコ軍部隊とロシア軍憲兵隊は、無人航空機を使用して非武装地帯で連携パトロールを実施し、監視活動に取り組む。合わせて、両部隊は、地元住民や物資の自由な移動を保障し、通商経済活動再開のために活動する。
8. 2018年末までにM4高速道路(アレッポ市・ラタキア市間)とM5高速道路(アレッポ市・ハマー市間)の輸送ルートを再開する。
9. イドリブ県の緊張緩和地帯内での停戦を持続させるための措置を講じる。そのために、イラン・ロシア・トルコの合同調整センターの任務を強化する。
10. ロシアとトルコは改めて、シリア国内であらゆるかたちでテロと戦う決意を確認する。


地図1 ロシア・トルコ首脳会談で設置合意された非武装地帯(2018年9月)
aoyama_map1.jpg出所:筆者作成。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「AIよ、うちの商品に注目して」、変わる

ワールド

エアバス、A320系6000機のソフト改修指示 A

ビジネス

ANA、国内線65便欠航で約9400人に影響 エア

ワールド

アングル:平等支えるノルウェー式富裕税、富豪流出で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 7
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    香港大規模火災で市民の不満噴出、中国の政治統制強…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中