最新記事

公衆衛生

空港にトイレより汚い場所があった 全員が触るのに

The Filthiest Spot in the Airport Isn't the Bathroom

2018年9月10日(月)14時50分
アビー・インテランテ

こんなに混むことも珍しくない空港だけに(バルセロナ・エル・プラット国際空港) Albert Gea-REUTERS

<空港で乗客が必ず触れるあの場所がウイルスの温床になっている、というショッキングな研究結果が明らかに>

あなたは飛行機に乗るたびに、空港で最も汚い場所を触っている──。

フィンランドとイギリスの科学者らが実施した研究で、空港にある場所で最も表面部分が汚いのは、セキュリティーエリアで我々がジャケットや靴やPCを入れるトレーであることが分かった。感染症の専門誌「BMC Infectious Diseases」に8月29日に発表された研究結果によれば、それらのトレーにはトイレの便座を上回る数のウイルスが付着していると言う。

研究チームは2016年の冬、年間1890万人が利用するフィンランドのヘルシンキ・バンター空港の90カ所で、表面部分や空気中にいる細菌のサンプルを採取。1日3回、利用者数がピークになる時間帯に絞って、ウイルス残留の有無を調べた。

その結果、断トツで最も汚かったのが持ち物検査用のトレーで、半数にA型のインフルエンザを含む何らかのウイルスが付着していた。風邪の原因となるライノウイルスやコロナウイルスOC43でも陽性反応が出た。アメリカの政府機関、疾病予防管理センター(CDC)によれば、結膜炎や肺炎、風邪、下痢、気管支炎など様々な病気の原因となるアデノウイルスも検出された。それほど不潔なトレーに、乗客は自分の手だけでなく、鍵やバッグ、靴、携帯電話などあらゆる持ち物を接触させているわけだ。

トイレは意外にきれい?

空港で2番目に汚いのは、子供用の遊び場にあるプラスチック製のおもちゃや、ドラッグストアにある支払い用端末だった。入国審査場のデスク、ガラス状の仕切り、保安検査場の空気中、階段の手すりなどでもウイルスが検出された。だがそれら4カ所全てについて、表面部分にウイルスが付着していたのは1例ずつしかなかった。

意外にも、トイレの上蓋、水を流すボタン、個室のドアの鍵の部分のどこからも、ウイルスは検出されなかった。14カ所の異なるトイレでサンプルを採取したにもかかわらずだ。

全体的に見て、調査対象にした場所の表面部分の10%で、少なくとも1種類のウイルスが検出された。今回の研究はフィンランドにある1つの空港を調査したに過ぎず、国や地域によって結果が異なってくる可能性はある。だが空港の保安検査用のトレーはあらゆる乗客が使用するため、トレーにウイルスが付着すれば危険なウイルス感染が国を超えて広がるリスクがある、と科学者らは警告している。

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中