最新記事

ネイチャー

自然の音を聞くと気分が落ち着く...は、科学的に実証されている

2018年9月6日(木)18時25分
松丸さとみ

自然の音を聞くと気分が落ち着く? ikick-iStock

<自然の音を聞くと気分が落ち着く? これは単に「気分的なもの」ではなく、科学的実験で実証されていた>

米国立公園内で録音された自然音

都会でせわしなく働いていると、なかなか「自然の音」に触れる機会はないものだ。そんなあなたにぜひ試してもらいたいのが、米国の国立公園局が設立102年を記念してこのほど公開した、全米内の複数の国立公園で録音された自然音のサウンド・クリップだ。

パークトラックス」と名付けられたこの音源は、鳥のさえずりや雷鳴、動物の鳴き声などが収録されており、まるで米国の広大な自然に抱かれているような気分になれる。12分強のMP3でダウンロードが可能だ。自分のスマートフォンやパソコンに入れれば、インターネットにつながずに再生できる。

自然の音を聞くと気分が落ち着くという人は多いのではないだろうか? これは決して単なる「気分的なもの」ではなく、科学的な説明がなされている。昨年、脳のスキャンや心拍数モニターなどを使って森などの自然環境音による心理的な効果を検証した、世界で初めての実験が行われたのだ。結果は科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。

自然音で副交感神経系の働きが高まる

米国の女性向け健康雑誌「ヘルス」の電子版(2017年4月5日付)によると、英国のブライトン・サセックス・メディカル・スクールは、17人の成人に、5分間の自然環境音と人工音をそれぞれ聞いてもらった。実験参加者は音を聞いている間、集中力と反応時間を測定するためにタスクを与えられた。この時の脳の様子を磁気共鳴機能画像法(fMRI)のスキャンを見て分析するとともに、自律神経系の変化を測定するために、心拍数がモニターされた。自律神経系は、呼吸や血圧、体温の調整、代謝、消化といった人間が無意識で行なっている処理を司る。

fMRIを分析したところ、人工音を聞いている時は心配や気分の落ち込みといった心理的ストレスに関係するパターンを示した。心拍数にも変化がみられた。物事に対する反応も、自然音を聞いていた時と比べ遅くなったという。

一方で、自然音を聞いている時は、全体的に体の交感神経反応(危険などに面した際に出る「戦うか逃げるか反応」を引き起こすもの)が低下し、体をリラックスさせる副交感神経反応が高まることが示された。



(参考記事)噴火がつづくハワイ・キラウエア火山──空から宝石が降って来た

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ルーブル美術館強盗、仏国内で批判 政府が警備巡り緊

ビジネス

米韓の通貨スワップ協議せず、貿易合意に不適切=韓国

ワールド

自民と維新、連立政権樹立で正式合意 あす「高市首相

ワールド

プーチン氏のハンガリー訪問、好ましくない=EU外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 6
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 7
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中