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「嫌われ力」が世界を回す

落合陽一に聞く、落合陽一のこと

2018年9月6日(木)18時00分
小暮聡子(本誌記者)

――子供のときに出る杭として打たれたら悲しい思いをすると思う。悲しいとは思わなかったのか。

他の人より、その共感性が薄いのかもしれない。ふぅん、となって、それで終わり。あまり引きずらないし。昔は悲しい思いをしたのかもしれないけど、(今は)あんまりない。もう、おばちゃん化したおじさんみたいな感じ。何も気をつかわなくなってしまった。

正当な批判は受け取ったほうがいい

――それでも、日本を変革するためにはたくさんの仲間が必要だろう。分かってくれない人たちにどうやってアプローチしていくのか。

全員が分からないといけないわけではない。ニッパチの法則(編集部注:世の中の事象のうち、80%のことは20%の要素が鍵を握っているという法則。20%の動向が全体の結果につながる)じゃないが、きっと2割くらい変われば、一気に全部変わる。

――『日本再興戦略』の中で説いている、欧米という幻想にとらわれず日本に今あるものにもっと価値を見出そう、という視点は高齢層に受けそうだ。「出る杭は打たれる」日本で、年配の方からの反応は?

僕はけっこう突飛なことを言っていることは多いけど、あまり出る杭として打たれている印象はない。僕の見方は、むしろ80代とかだと思う。田原(総一朗)さんと仲がいい。

ただ、例えば近代教育の受験戦争の中で生きてきた、同い年から少し下くらいの世代の若い人たちとは、相性が悪いのかもしれない。近代教育の価値観を否定すると、人生を否定することになるから。仕事内容で選ぶのではなく、とりあえず(世間的に見て)「いい会社」に就職したいと言っている人とは、僕はたぶん相性が悪い。そう思っている時点で他人の評価を気にしているわけで、価値基準が自分の側にないので。

――誰かに認めてもらうことで、自分なりの価値基準を確立してきたのか。

うちはけっこう放任で、父は忙しいし母も忙しくて。でも、たまに僕のことを褒めてくれる人はいた。ただ、今は昔に比べると比較的楽だ。いいものはSNSに上げるとシェアされるし、僕はいいと思っているのにウケが悪いなというときも、きちんと解説すると意外に受け入れられたりする。

SNSにはマイナス面もあって、見たい情報だけを見ていると内側のコミュニティーにこもってしまう。そうやって自分の世界にこもると、他人からの批判を受けなくなってしまうのであまり良くない。

でも僕は、内側のコミュニティー以外から批判されるのはわりと好きだ。例えばエゴサ(-チ)のボットを組んであって、自分の名前で検索する。それで否定的な意見を言っている人のことをちゃんと見ている。訳のわからないディスリ(中傷)には反撃するけど、正当な批判は非常にためになる。石を投げてくる人には武装して殴りかかっていくが、批評的にきちんと言ってくれる人には、ふむふむと思いながら勉強になっている。

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