最新記事

韓国事情

深刻なホテル不足から、一気に供給過剰が問題となっている韓国・ソウル

2018年8月23日(木)18時51分
佐々木和義

一気にホテルの供給過剰が問題になっているソウル Mlenny-iStock

<2012年には深刻なホテル不足が問題になっていた、韓国・ソウル。規制緩和と情勢変化で一気に供給過剰が問題になっている>

ソウルでホテルの供給過剰が続いている。韓国有数の繁華街である明洞エリアの3つ星や4つ星級のホテルが、通常10万ウォン台の宿泊料を平日1泊6万ウォンから8万ウォンに割引いて販売し、東南アジアの団体客に4万から5万ウォンの価格を提示するホテルも現れた。

稼働率は上がったが利益が出ない状況で、ホテルの売却を検討している企業もあると韓国経済新聞は伝えている。

規制緩和でホテルが乱立し、東日本大震災の余震の影響でホテル不足に

ホテルの供給過剰は政府の規制緩和に端を発している。年間600万人台で推移していた訪韓外国人は2012年に1000万人を突破した。外国人観光客の増加に加えて、東京に拠点を置く欧米系企業等が、東日本大震災の余震が続く東京を避けてソウルのホテルを仮事務所として利用するなどホテル不足が深刻化な課題となった。

政府は2012年7月から2016年までの時限措置として建設要件を緩和する「観光宿泊施設拡充に向けた特別法」を制定し、韓国企業に加えて外資系企業もホテル建設に乗り出した。

明洞だけで40軒増加している。統治時代に日本人街として発展し、1988年のソウル五輪と前後して外国人を迎える商店街として発達した地域で、建物の老朽化が進んでいる。外装だけ新しくして土台や柱は統治時代から更新されていない建物が少なくない。

土地が限られるソウルは中高層建築を好む地主が多く、容積率を緩和する特別法は老朽化した建物を建て替えるきっかけになったのだ。中国人の増加がホテルへの建替えを後押しし、低層階に商店が入居する「ゲタばき」ホテルが乱立した。

2012年に786カ所だった韓国のホテルは、2017年には1617カ所まで倍増し、2018年もさらに100カ所ほどのホテルが新しくオープンする見込みである。

外資ホテルや日本からの進出

フランスのアコーズホテルズは2017年10月にソウル龍山駅に隣接する敷地にドラゴンシティを開業した。4つのホテルとコンベンションからなる複合施設で、客室総数1700室を有する韓国最大のホテルだ。アコーズホテルズは2021年までに9軒のホテルを開業する予定で、提携先と合わせて30軒を超える韓国有数のホテルチェーンを目指している

日本からの進出も相次いでいる。東横インは2009年8月のソウル東大門を皮切りに2018年8月時点で9軒のホテルを展開している。共立メンテナンスは2014年と15年にソウル江南に2軒のドーミーインを開業し、西日本鉄道も2015年に明洞にソラリア西鉄ホテルを開業した。2018年には相鉄グループがソウル市内で2軒を開業し、藤田観光のホテルグレースリーが8月にオープンする。

(参考記事)「孤独のグルメ」が広がる韓国〜変わる韓国の日本食ブーム

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシアがウクライナに無人機攻撃、1人死亡 エネ施設

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中