最新記事
アルツハイマー

緑内障などの加齢に伴う眼疾患とアルツハイマー病との関連が明らかに

2018年8月13日(月)16時50分
松岡由希子

RuslanDashinsky-iStock

<緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症とアルツハイマー病発症リスクとの間に関連が認められたとの研究論文を発表された>

国際アルツハイマー病協会(ADI)によると、世界全体の認知症患者数は2015年時点で4600万人を超え、2050年までには1億3150万人規模に増加するとみられている。

なかでも、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)は、認知症を引き起こすもののうち最も多い疾患だが、このほど、老化や加齢に伴って発症する眼疾患とアルツハイマー病とのつながりを示す研究結果が明らかとなった。

緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症とアルツハイマー病

米ワシントン大学とカイザーパーマネンテ・ワシントン・ヘルスリサーチ研究所の共同研究チームは、2018年8月8日、アルツハイマー協会誌において、「緑内障、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病網膜症(DR)とアルツハイマー病発症リスクとの間に関連が認められた」との研究論文を発表した。

米国の健康維持機構のひとつ「カイザーパーマネンテ」では、1986年に専門研究プロジェクト「ACT」を創設し、登録時点で認知症にかかっていない65歳以上の高齢患者を被験者として、加齢にまつわる研究に取り組んでいる。

白内障は、アルツハイマー病の危険因子とは認められなかった

共同研究チームは、この「ACT」のデータベースを用い、「ACT」に登録されている3万1142名の高齢患者から3877名を無作為抽出し、緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、白内障とアルツハイマー病のリスクとの関連について5年間にわたり調査した。

その結果、アルツハイマー病と診断されたのは792名で、緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症のいずれかにかかっている人は、そうでない人に比べて、アルツハイマー病発症リスクが40%から50%高いことがわかった。一方、白内障は、アルツハイマー病の危険因子とは認められなかった。

この研究論文は、眼疾患とアルツハイマー病との因果関係や目の働きと脳の働きとの関連については明らかにしていないが、目の仕組みや機能から脳の状態を知るという新たなアプローチをひらく成果として注目されている。

(参考記事)炭酸飲料の取りすぎでアルツハイマーにかかるリスクが3割増

アルツハイマー病の早期発見や治療法の確立に期待

研究論文の筆頭著者であるワシントン大学のセシリア・リー准教授は「緑内障や加齢黄斑変性、糖尿病網膜症の患者がアルツハイマー病にかかるというわけではない」と強調する一方で、目で起こる何らかの現象が脳の動きと関連している可能性を指摘。

「眼科医は、これらの眼疾患にかかっている患者の認知症リスクについて認識するべきであり、これらの眼疾患の診断においては、認知症や記憶障害の検査も慎重に行う必要があるだろう」と説いている。

これまでのアルツハイマー病の研究では、脳組織におけるアミロイドβの蓄積に注目したものが多かったが、この研究論文により、アルツハイマー病の早期発見やよりよい治療法の確立につながる新たなアプローチとして、目と脳の神経変性のさらなる解明にも期待が寄せられている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

PayPay、米ナスダックに新規上場申請 時価総額

ワールド

トランプ氏、ベネズエラと「並外れた」関係 石油富豪

ワールド

トランプ氏のイラン合意状況整備に期待、軍事行動回避

ワールド

ロシア、米との経済協力分野選定 ウクライナ戦争後見
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 10
    エプスタイン疑惑の深層に横たわる2つの問題
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中