緑内障などの加齢に伴う眼疾患とアルツハイマー病との関連が明らかに
RuslanDashinsky-iStock
<緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症とアルツハイマー病発症リスクとの間に関連が認められたとの研究論文を発表された>
国際アルツハイマー病協会(ADI)によると、世界全体の認知症患者数は2015年時点で4600万人を超え、2050年までには1億3150万人規模に増加するとみられている。
なかでも、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)は、認知症を引き起こすもののうち最も多い疾患だが、このほど、老化や加齢に伴って発症する眼疾患とアルツハイマー病とのつながりを示す研究結果が明らかとなった。
緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症とアルツハイマー病
米ワシントン大学とカイザーパーマネンテ・ワシントン・ヘルスリサーチ研究所の共同研究チームは、2018年8月8日、アルツハイマー協会誌において、「緑内障、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病網膜症(DR)とアルツハイマー病発症リスクとの間に関連が認められた」との研究論文を発表した。
米国の健康維持機構のひとつ「カイザーパーマネンテ」では、1986年に専門研究プロジェクト「ACT」を創設し、登録時点で認知症にかかっていない65歳以上の高齢患者を被験者として、加齢にまつわる研究に取り組んでいる。
白内障は、アルツハイマー病の危険因子とは認められなかった
共同研究チームは、この「ACT」のデータベースを用い、「ACT」に登録されている3万1142名の高齢患者から3877名を無作為抽出し、緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、白内障とアルツハイマー病のリスクとの関連について5年間にわたり調査した。
その結果、アルツハイマー病と診断されたのは792名で、緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症のいずれかにかかっている人は、そうでない人に比べて、アルツハイマー病発症リスクが40%から50%高いことがわかった。一方、白内障は、アルツハイマー病の危険因子とは認められなかった。
この研究論文は、眼疾患とアルツハイマー病との因果関係や目の働きと脳の働きとの関連については明らかにしていないが、目の仕組みや機能から脳の状態を知るという新たなアプローチをひらく成果として注目されている。
(参考記事)炭酸飲料の取りすぎでアルツハイマーにかかるリスクが3割増
アルツハイマー病の早期発見や治療法の確立に期待
研究論文の筆頭著者であるワシントン大学のセシリア・リー准教授は「緑内障や加齢黄斑変性、糖尿病網膜症の患者がアルツハイマー病にかかるというわけではない」と強調する一方で、目で起こる何らかの現象が脳の動きと関連している可能性を指摘。
「眼科医は、これらの眼疾患にかかっている患者の認知症リスクについて認識するべきであり、これらの眼疾患の診断においては、認知症や記憶障害の検査も慎重に行う必要があるだろう」と説いている。
これまでのアルツハイマー病の研究では、脳組織におけるアミロイドβの蓄積に注目したものが多かったが、この研究論文により、アルツハイマー病の早期発見やよりよい治療法の確立につながる新たなアプローチとして、目と脳の神経変性のさらなる解明にも期待が寄せられている。