ハチの死滅が懸念される中、トランプ政権が問題の殺虫剤の使用禁止令を撤回
ハチの死滅が懸念されるが… dmf87-iStock
<ハチが世界各地で死滅しつつあると懸念されているが、その関係が指摘されている殺虫剤の使用禁止令をトランプ政権が撤回し、問題になっている>
ネオニコチノイド系殺虫剤は、世界で最も広く使用されている殺虫剤のひとつで、2008年時点で使用量全体の24%を占めている。
従来の有機リン系殺虫剤に比べて人体への安全性が高いため、農薬として世界各地で使用されており、昆虫に対する毒性は強く、植物への浸透移行性によって残効が長いのが特徴だ。
ハチへの害が懸念され、欧州では全面使用禁止に
しかし、近年、世界各地で急激に作物の受粉を媒介するハチが死滅しているのが大きな問題になっているが、この殺虫剤が、ハチに害をもたらしているのではないかとの懸念が指摘されてきた。
2018年5月には、欧州委員会(EC)が、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムという3種類のネオニコチノイドの屋外使用を全面禁止する規則を採択するなど、その使用を禁止する動きも少なくない。
オバマの決定をトランプが破棄
一方、米国では、オバマ政権下の2014年7月、魚類野生生物局(FWS)が「2016年1月までに、国立野生生物保護区での農作物栽培においてネオニコチノイドの使用を禁止する」との決定を発表し、ネオニコチノイドの使用禁止に向けて舵を切ったとみられていた。
しかし、2018年8月、「国立野生生物保護区において農業生産性を確保するためには、ネオニコチノイドの一律禁止は適切でなく、ケースバイケースで判断されるべきものだ」との見解のもと、この決定が破棄され、米国内外で物議を醸している。
ハチに及ぼす影響が徐々に明らかになっている
ネオニコチノイドがハチに及ぼす影響については、これまでの研究結果でも明らかになっている。
2014年5月に米ハーバード大学公衆衛生大学院(HSPH)の研究チームが「ネオニコチノイドが正常な蜂群の越冬に影響を及ぼし、ミツバチが大量に失踪する"蜂群崩壊症候群(CCD)"を誘因となっている」との研究論文を発表した。