世界が笑った中国模倣建築、実は、なぜだか販売好調
China’s “Duplitecture”
中国政府はここ数年、こうした「奇妙で巨大な外国崇拝」の建築物の増加を食い止めようとしている。国務院は2016年、新しい建物が「適切、経済的、環境に優しい、見た目が美しい」ことを満たすよう文書を出した。
奇妙な建築の急増を受けて、習近平(シー・チンピン)国家主席も「奇々怪々な建築」の建設中止を呼び掛けた。習の指示は模倣建築を狙い撃ちにしたものではないが、標的の一部には含まれていた。
「高級芸術作品は青空から降り注ぐ日の光のように、春のそよ風のように、精神を鼓舞し、嗜好を深め、望ましからざる作風を一掃するものであるべきだ」と、習は言った。
習の批判は地方政府の意思決定に影響を与えた。「地方政府はより保守的な設計を認可する傾向が強くなった」と、深圳の建築家・馮果川(フォン・クオチョアン)はニューヨーク・タイムズ紙に語った。
中国全土での締め付けにもかかわらず、現在も江西省撫州では、観光地「三翁小鎮」の一部にシェークスピアの故郷ストラトフォード・アポン・エイボンの街並みを再現する工事が続いている。
「中流層や上流層は世界中を旅しているが、(外国旅行は)まだまだ高額。多くの人々にとって、杭州にあるパリのレプリカを訪れることが次善の策だ」と、アメリカ人ジャーナリスト・作家のビアンカ・ボスカーは本誌に語った。
「(模倣都市は)ただのテーマパークではない。中には住宅地と観光地の両方の役割をこなしている場所もある。その意味では、本物のパリやローマとそれほど違わない」
ボスカーは2013年に出版した『オリジナルコピー──現代中国の模倣建築』で、中国における模倣建築の歴史を初めて本格的に整理した。取材の過程で中国各地を訪れ、世界最大の人口を持つ国が欧米の歴史的建築に引かれる理由を探ろうとした。
「天都城を初めて訪れた人々は、模倣建築のコミュニティーに足を踏み入れると、何千マイルも離れた場所に連れて来られたように感じる。細部へのこだわりは驚くべきものだ」
パロディーのようなもの
天都城は見た目こそパリに似ているが、文化的にはやはり中国だ。「フランス式」のパン屋ではパリのバゲットではなく、タロイモ、塩漬け卵、饅頭(マントウ)を売っている。本物のように保存や維持管理がしっかりしているわけでもない。噴水は干上がり、空にスモッグの雲が浮かぶ。
一部の住宅購入希望者にとって、天都城はあまりに奇妙で交通が不便かもしれないが、主要都市に近い他の模倣都市ははるかによく売れている。米ABCニュースによると、中国版ジャクソンホールのある物件は200万ドル相当で売れた。人気の決め手は、北京への近さだった。