夏バテ予防で食される韓国の犬肉 賛否渦巻いて、鶏肉の消費が拡大
脱犬肉を推進する自治体と消極的な政府
2016年12月、京畿道城南市(ソンナム)は、同市の牡丹(モラン)市場で犬肉を扱う事業者と協約を締結した。牡丹市場は韓国最大規模の犬肉市場で、最盛期には54の専門店があったが、2002年のサッカーワールドカップ日韓共催を機に消費が低迷し、22店まで減少していた。
協約は、事業者に販売目的での犬の保管や展示屠畜の中止と関連施設の撤去を求め、市側はテナント料の引き下げなど再契約を誘導する内容で、業種転換資金の低利斡旋や環境改善の支援を含んでいる。15店が協約に参加し、翌17年2月から撤去と業種転換がはじまったが、犬肉取扱い業者は50代以上など、経験がない業種への転換に不安を抱える人が少なくない。
国会では、乾燥処理されてない食物廃棄物を家畜の餌にすることを禁ずる「廃棄物管理法一部改定法律案」が議論されているが、環境部は食物廃棄物の4分の1近くを処理している犬農家の相当数が廃業に追い込まれると反対する。
犬農家が引き受けている湿式残飯は伝染病感染の懸念などが指摘されているが、犬は畜産物衛生管理法上の家畜に含まれていないため、取り締まる法的根拠がない。
食物廃棄物をバイオガス燃料に転換する方向で研究しているとしながらも地域住民の同意が必要で、残飯処理業を兼ねる犬農家に依存せざるを得ないのだ。
犬肉を食べるかどうかは個人の自由という意見がある。2018年6月の世論調査でも51.1%が法律で禁止することに反対しており、食用犬と伴侶犬を区別すれば良いという考えや牛肉や豚肉などを食べながら犬食だけを悪者扱いすることに疑問の声もあがっている。
犬食の容認は繁殖農家をはじめとする事業者の保護に主眼が置かれているが、犬肉を食す人は周囲から奇妙な目で見られるなど肩身が狭く、敬遠する動きが広がっており、いずれ衰退するという見方が多い。
犬肉反対派が増え、鶏肉に
犬肉反対派が増えるなか、鶏肉の消費量が増加傾向を示している。韓国ブロイラー協会によると、2009年の1人当たり消費量は年12.7キログラムで日本の15.1キログラムより少なかったが、2011年には日本(16.5キログラム) と並ぶ16.4キログラムとなり、2015年には18.9キログラムまで増加した。
フライドチキンを提供するフランチャイズ店が増えたことに加えて、「三伏」の時期の増加も著しい。2005年に6932万羽だった7月の屠殺数は2014年には1億500万羽に達するなど、6月から8月の屠殺量が年全体の30%以上を占めている。賛否が渦巻く韓国の犬食文化が、こうしたところにも変化の兆しを示していると言えそうだ。